松山ケンイチを支える二つの軸「目指す方向があるからこそ、迷わず前に進めている」

 そして2023年3月には、自身のブランド『momiji』を立ち上げた。

「田舎に移住した際に、動物は食肉として使われる一方で、皮など本来活用できるものが廃棄されている現状を知りました。その一方で、海外から皮を輸入しているという矛盾もあって、資源を生かしきれていないことにもったいなさを感じたんです。自分なりに何かできないかと考える中で、この取り組みにたどり着きました」

『momiji』とは植物の紅葉だけでなく、鹿肉の別称も意味している。

「『momiji』を立ち上げたことは、僕にとって大きな原動力のひとつになっています。アップサイクルや廃棄される資源をどう活かすかという取り組みは、雇用を生み、地域の活性化にもつながる可能性がある。田舎出身で、今も田舎に暮らしているからこそ、強く考えるテーマだと思っています。地方が元気を失えば、日本全体にも影響が出てしまうかもしれない。だからこそ、そこに少しでも貢献したいという思いがあります。

 そのためにも、地域の活動を伝える立場として、俳優という仕事をしっかり続けていかなければならない。俳優としての活動と『momiji』での取り組みは、お互いに影響し合いながら、今の自分を支える二つの軸になっています。目指す方向があるからこそ、迷わず前に進めている感覚があります」

 プライベートでは今年、2026年は本厄の年だという。

「俳優って“役”者なんで“厄”年って良いらしいんですよ」

――役者さんには「“役”を払うから、“厄”払いはしない」という方もいますよね。

「僕も厄払いしなくて正解だったなって思いました(笑)。今回の『テミスの不確かな法廷』みたいな作品に出会えているし、とても良い年なんです。今も転機に向かって動いているんだなっていう風に思いますね」

 立ち止まり、視野を広げることで、これまで見えていなかったものに気づく。その積み重ねが、現在の松山の歩みにつながっているように感じられた。これからも、俳優、そして人間、松山ケンイチから目が離せない。

まつやま・けんいち
1985年3月5日生まれ、青森県出身。B型。2002年にドラマ『ごくせん(第1シリーズ)』で俳優デビュー。2005年、映画『男たちの大和/YAMATO』で日本アカデミー賞新人俳優賞ほか受賞。2006年公開の映画『デスノート』『デスノート THE Last name』でブレイクし、2012年に大河ドラマ『平清盛』(NHK)で主演を務めた。近年の主な出演作は、映画『ロストケア』(2023年)、『大名倒産』(2023年)、大河ドラマ『どうする家康』(NHK・2023年)、連続テレビ小説『虎に翼』(NHK・2024年)、映画『聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメン VS 悪魔軍団~』(2024年)、ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS・2025年)、WOWOW『おい、太宰』(2025年)などがある。

▪︎作品情報
-ドラマ10『テミスの不確かな法廷』
-2026年1月6日(火)スタート〈全8話〉
-NHK総合テレビ 毎週火曜 夜10:00〜10:45
-[再放送] 総合テレビ 毎週金曜 午前0:35〜1:20
※木曜深夜、※NHK ONE(新NHKプラス)で同時・見逃し配信
-原作: 直島翔『テミスの不確かな法廷』
-脚本: 浜田秀哉
-出演: 松山ケンイチ 鳴海唯 恒松祐里 山崎樹範/市川実日子/和久井映見 遠藤憲一 他
ⒸNHK