「路上で歌ってきたときのように自由に歌える状況をつくりたかった」レコーディングに凝らした工夫

 こうしたきめ細やかな作業の積み重ねにより、寺岡さんは多くのミュージシャンの信頼を得ていった。ただ、レコーディングはCDなどに記録され半永久的に残るため、通常は安定した演奏を求めるものだ。「クリックを使わない」というのは、けっこう大胆な提案だった気もするが……。

「ゆずの2人には、路上で歌ってきたときのように自由に歌える状況をつくりたかったんです。先ほど(原稿1)お話したように、僕自身が最初のレコーディングで、デビューに合わせてベースを猛特訓しなきゃいけなかったり、不慣れな環境からくる緊張感やプレッシャーに押しつぶされそうになったりしました。
 実は、僕のように最初に苦労したことがトラウマになり、レコーディングに苦手意識を持ってしまう方って意外と多いんです。だからゆずの2人には、最初から“レコーディングって楽しい”と思える環境にしたかったんです」

 当時、ゆずの2人は20歳。10歳近く年上の寺岡さんはきっと、頼れる兄貴的存在といったところだろうか。

「僕から見れば、2人はある部分で僕以上に大人だったと思います。だから、当時の僕にもついてきてくれたんじゃないかなって。
 ゆずの2人をプロデュースさせていただいたことで、僕自身もミュージシャンとしての総合的なスキルが上がったと感じています。成長させてもらったのは、むしろ僕のほうだったのかもしれませんね」

※本人のインスタグラム@yohitoteraokaより