俳優・佐藤浩市の出演作リストは驚くべき長さだ。1980年のデビューから映画、ドラマに出演しつづけ、2023年は横浜流星と共演する主演作『春に散る』をはじめ、公開される出演映画は実に9本になる。佐藤さんにとっての「THE CHANGE」とはなんだったのかーー。【第1回/全4回】

佐藤浩市 撮影/三浦龍司
佐藤浩市 撮影/三浦龍司

 真っ白な髪に黒いスーツ。現場の佐藤浩市さんを目にした瞬間、カメラマンが漏らした「カッコいい…」は、まさにその場にいる全員のシンプルすぎる感想だった。心をつかまれた取材者ひとりひとりに佐藤さんは会釈をして、取材がはじまった。

 佐藤さんが主演する映画『春に散る』は、沢木耕太郎さんの小説が原作。佐藤さんが演じるのは、かつてボクサーだった主人公・広岡仁一。広岡が横浜流星さん演じる若いボクサー・黒木翔吾と出会い、2人で新たな夢に向かう、というストーリーだ。
 この作品のためにボクシングを始めた横浜さんは、2023年の6月にプロテストに合格したことも大きく報じられた。
 26歳の横浜流星さんと63歳の佐藤浩市さんの関係は、現実でも映画をなぞるような印象があるが、現場ではどうだったのだろうか。

ーー横浜さん演じる翔吾は、広岡との出会いからして生意気でした。佐藤さんご自分の周りに、生意気なほどまっすぐな後輩はいますか? また、そういうタイプは好きですか?

「いや……今の時代の若い人たちのほうがはるかに賢いから、そういった攻撃的な見せ方をすることを、賢いとは思わないんですよね。
 われわれの時代は、前のめりに攻撃的な自分を見せたほうがいいって考えていたから、より攻撃的だった。世の中に対しても先輩に対しても。
 そういったところはあったけど、今の人たちは賢いからなかなかそういうことはないんですよね。だから、逆にそういうのを見ると、お? へえ? ってこっちは思う。

 おうおういいじゃねえか、牙むいてこいや、みたいな。たまにいますよ。それは嬉しいですね。

 流星だって、決してぞんざいな態度や攻撃的な行動はないけど、でもここが(胸を示しながら)たぎってるのはすごくよくわかるし」