手術後3週間は入院、その後2か月は自宅療養「あ、無理なんだ。じゃあ、うさぎ役はどうなっちゃうんだろう」
シリーズ第1作目『美少女戦士セーラームーン』のクライマックスのアフレコ日だった。
「自宅で急にお腹が痛くなって動けなくなってしまい、母に電話をして来てもらい、そのまま病院へ向かいました。検査の結果『すぐに入院して手術をしましょう』と言われてしまって。診断は穿孔性卵巣嚢腫でした。それまでは『生理痛が少し重いかな』感じる程度で、深刻には捉えていなかったんです。一応、婦人科で診てもらったこともあったのですが、そのときは特に異常は見つからなくて」
その日の収録に行けないことは明らかだった。そして同時に「もしかしたら降板になるのかもしれない」という不安が押し寄せてきた。
「手術後3週間は入院、その後2か月は自宅療養という診断なので、『あ、無理なんだ。行けないんだ。じゃあ、うさぎ役はどうなっちゃうんだろう』って。入院中はそんな心配をしながら、『親に心配をかけて申し訳ないな』と思ったり、いろんな思いが渦巻いていました」
最終回までの残り数話は、のちにちびうさ役として起用される荒木香衣さんが務めることとなった。視聴者には、放送時にテロップで三石さんの休養が伝えられたという。
「当時はSNSがなかったので、すぐに反応が見えるわけではなく、視聴者の皆さんにどう受け取られるのか不安でした。その後、お手紙をたくさんいただいて、反応が半々だったのが印象的でしたね。半分は心配してくださるもの、もう半分は『声優が変わったことに気づかなかった』というもので。そこで『役者が変わっても、物語は続くし、キャラクターもそのまま生き続けていくんだ』と思い知ったといいますか。『じゃあ担当した声優の存在意義って、どこに見出せばいいんだろう』とか、役との関係などいろいろ考えてしまいましたね」
――アニメは大きな盛り上がりを見せ、三石さんご自身も脂が乗っていた時期だっただけに、まさに急転直下の出来事ですよね。
「そう、急にすべてが途切れて、いわば“カットアウト”されたような感覚でした。自宅療養中は焦りが募り、『早く現場に戻りたい!』という思いばかりが強くなっていきました」
療養の甲斐あり、念願の復帰を果たしたのはシリーズ2作目『美少女戦士セーラームーンR』5話目からだった。
「久しぶりの収録で、プロデューサーに言われたんです。『うさぎちゃんがきつくなっちゃってるかも』って。言われた瞬間は『え? 私がやってるんだから、これがうさぎちゃんのはず』と思いましたが、役を“自分のもの”だと思い込み、執着が無意識に表れてしまったんでしょうね。執着が一番心を曇らせるのにね。この出来事から定期検診は欠かさないようにして、何か不調があったらすぐに受診するようにしてます。女性の皆さん、婦人科検診にはいきましょうね」