クライマックスの第36話で起きた“逆転現象”「何度叫んでも変身できなくて、悔しくて泣きながら叫ぶシーンでした」
一方で、復帰後に暖かく迎えられたことが、代えがたい安心感にもつながった。
「『おかえりなさい』と言ってもらえてすごく安心したし、居場所があってよかったな、と思いました。」
ーー復帰後、収録中の出来事で深く印象に残っていることはありますか?
「たくさんありますが、復帰したときの『あんまん、肉まん、春爛漫!』という口上は、とても印象深いですね。それから『美少女戦士セーラームーンS』のとあるシーンでは、いまでも強く記憶に残っている出来事がありました」
同作クライマックスの第36話『輝く流星!サターンそして救世主』でのことだった。この世界と大切な仲間、すべてを守るためにセーラームーンが二段階変身しようと「クライシス・メイクアップ!」と叫び続けるが、一向に変身できない……というシーンだった。
「何度叫んでも変身できなくて、悔しくて泣きながら叫ぶシーンでした。私たち声優はアニメーションに合わせて命を吹き込むように、エネルギーを込めて声をあてますが、このときは逆転現象が起きたように感じたんです。私の泣き叫ぶ声に、絵が合わせてくれたような、そんな感覚に『これはなんだろう!?』と思ったほどです。貴重な経験でした」
病によってキャリアが一度途切れる、いわば“カットアウト”を経験したからこそ、その後あらためて仕事に邁進するなかで、「仕事の面白さ」を実感するようになったという。三石さんは「突き詰めれば、いろんな景色が見えるのだな、と感じた瞬間でした」と振り返った。
つづく
みついし・ことの
1967年12月8日生まれ、東京都出身。勝田声優学院を経て1989年に声優デビュー。卒業後に劇団あかぺら倶楽部を結成し、舞台での活動も行う。着実にレギュラーやヒロイン役を演じる中、1992年に『美少女戦士セーラームーン』で主人公の月野うさぎ/セーラームーンを、1995年には『新世紀エヴァンゲリオン』で葛城ミサトを演じて国民的声優に。2005年からは『ドラえもん』で野比玉子を担当している。2021年には『リコカツ』(TBS)で初の連ドラレギュラー出演、2024年にはNHK大河ドラマ『光る君へ』に出演、ナレーターとしても活躍の場を広げている。