『こち亀』秋本治先生から学んだ「仕事を楽しむ」こと
“生まれたこと”は確かに間違いのない“CHANGE”。そこから少し時計の針を進めて、子どもの頃、今の林さんを作った要素、そのきっかけは?と深掘りして聞いてみた。
「今の職業につながるところでいうと、本が好きになったきっかけはありますね。小6の中学受験のときの勉強です。その前に、小4のときに親に手紙を書いて、一度受験をやめているんですよ。もうやりたくないと思って『辞めたいです』って。でも小6の夏に気付いたんです。このままだと、ちょっと荒れた中学に行くことになるぞ、って(笑)。それでやっぱり受験しようかなと思って、小6の夏からまた受験勉強を始めて。そのときの先生が、受験には本を読んだらいいよと勧めてくれて。動物の生態についての本とか、『四万十川』(笹山久三・著)とかを読んでいました。そこで本を好きになった記憶があります。好きになったというか、読む本の選び方が変わった、という印象ですね。ただ、それが“CHANGE”かと言われると、そうではない気もするんですけど(笑)」
林さんのスタンスは自然体で、その時のその時の出来事をしなやかに受け止めているようにも感じる。
「漫画の編集という業務が楽しいってことに新人時代に気がついて。今でもその気持ちを大切に続けようって思っているんです」
仕事を楽しむというスタンスは、秋本治先生を担当した経験から影響を受けたという。
「秋本さんは、ずっと楽しそうにされているんですよ。素敵だなと思いますし、嫌々やらされるよりも、ずっといいなと感じます。自分自身も、そういう意味では楽しみながらやってきたと思っています。秋本さんにはご恩を感じていますし、その後もお世話になっている先生ですね」
今回の本『9人の「超個性」プロの新仕事論』の津田健次郎さんとの対談の中で「成長はなだらかではなく階段状に起こる」という話をされている林さん。編集者から見た作家の変化についての話なのだが、作家の“CHANGE”はどう見ているのだろうか?
「作家さんは、本当にいきなり大きく変わる人が多いんです。急にうまくなったり、ネームの書き方が変わったり、何かを掴んだ瞬間に、ぱっと変わる印象があります。読者の皆さんも、作品を読んでいて、そうした変化に気づくことがあると思います。あの瞬間はやはりわくわくしますし、連載を追いかけていく楽しみのひとつですよね。だから、自分にもそういう“ぱっと変わる瞬間”がわかりやすくあればいいとは思うのですが、正直なところ、あまり思い当たらないというのが実感なんです。そう考えると、そうした転機はこれから来るのかもしれないですね。まだ来ていなくて、これから大きく変わる、ということなのかもしれません……っていうことで、どうですかね?(笑)」
<書誌情報>
タイトル:『9人の「超個性」プロの新仕事論』
著者:林士平
発売日:2026年3月30日(月)
判型:四六判
価格:1,800円(税別)
発売:双葉社
購入:https://www.futabasha.co.jp/book/97845753206330000000
