カットを忘れて「僕が言うんでしたっけ?(笑)」初監督でどこまで「わがまま」になれるか
クランクイン初日は、想像を絶するほど疲れました (笑) 。監督業は本当に脳みそを使う仕事なんだと実感しましたね。
帰宅しても、車から降りるのがやっとという状態でした。ただ、これほど疲労困憊したのは初日だけで、やはりどこか力みがあったのでしょうね。緊張とリラックスを自分でコントロールできればと思いながら、手探りで進めていたんです。しかし、翌日からはそこまでの疲れはなかったので、比較的早く現場に適応できたのではないかと思います。
実際、撮影中に「カット!」をかけるのを忘れてしまったことが何度かありました (笑) 。助監督に指摘されて、「すみません、僕が言うんでしたっけ?」と聞き返したほどです。もちろん、わざとではありませんが、そんな僕の不慣れな姿を見せることも、ある意味ではプラスに働くかもしれないとは考えていました。
周りは、僕よりも経験豊富なスタッフばかりですから、「この監督は自分たちが支えないとダメだ」と感じてもらうことで、かえって現場に良い緊張感が生まれるのではないかと思ったんです。
監督の醍醐味は、現場でどこまでこだわりを貫き、ある意味で「わがまま」になれるかだと思っています。ただ、実際にやってみると、どこからが許される「わがまま」なのか、その線引きは分かりませんでした。もしかしたら、周りのスタッフからは「結構わがまま言ってたよ」と思われていたかもしれませんが (笑) 。
役者は、与えられた一つの役と向き合いますが、監督はプロの役者さんたちと共に、作品に登場するさまざまな役柄に関わることができます。今回、監督を経験して、その面白さを改めて実感しました。
若さの秘訣について聞いていただくことがありますが、いま58歳なので、もうすぐ還暦です。でも、俳優としては、この歳じゃないと出来ない役というのがあると思うんです。
たとえば、アンチエイジングして50歳に見えるって言われて喜んでいたとするじゃないですか。そうなると、体力もないのに50歳の人と競わなくてはいけなくなってくるんで大変ですよ(笑)。だったら歳相応の役のほうが絶対楽しいなって。