『国宝』著者・吉田修一の長編小説『ミス・サンシャイン』を水上恒司が瑞々しく表現している

 水上が朗読する小説『ミス・サンシャイン』は、『国宝』の著者としても知られる作家・吉田修一の長編小説。心の傷を抱えた大学院生の岡田一心が、伝説の映画女優・和楽京子こと石田鈴の自宅で荷物整理のアルバイトをする中で、交流を深めて行く物語。

「ぼく、いつも車で仕事場に行くんですけど、車の中でラジオを聴くのが好きなんですよね。ラジオとオーディオブック、カテゴリーはちょっと違うけど、声の表現で聴き手に届けるという意味では共通する部分があると思うので、お話しをいただいたときは“ぜひ、やりたい”と思いました」

水上恒司 撮影/有坂政晴

 これまでに何度か朗読の経験はあったというが、これほど長い小説の朗読は初めてのこと。

「自分がどれくらいできて、何ができないのかを見定めたいという気持ちもありました。ぼくが普段やっているドラマや映画のお芝居は、セリフが1割くらいで、身体の表現が9割という感じなんですが、朗読は声の表現が10割。事前に“大変だろうな”とは思っていましたが、スタジオに入ってみると想像以上に大変でした」

 録音は、平均5時間を数日かけて行われたという。

「最初の1時間くらいはなかなか調子が出なくて、その後の2、3時間は乗ってくるけど、最後の1時間くらいには少しスタミナが切れてくる。苦手な発音や言葉の組み合わせがある……というような、自分の声に対する研究をしながら、全力で物語と向き合った数日間でした」