僕は役にも人にも恵まれてきたと思います

『仁義なき戦い』の1作目に出演したのは27歳の頃です。僕が演じた上田という登場人物が、賭場でぬるいビールを出されて、「馬のションベンか!」と言うシーンがありました。主演した菅原文太さんに、「場が引き締まるセリフだから、しっかりやれよ」と言われ、緊張感をもって演じたのをよく覚えています。お陰様で、いまだに僕の顔を見て、「馬のションベンか!」という人がいますよ(笑)。

 僕は任侠か時代劇の印象が強いかもしれませんが、違った役も演じています。色っぽい作品にも出ました。

『かまきり夫人の告白』(1975年)という作品でね、主演の五月みどりさんが付き合う男たちがみんな死んでいくんですよ。僕は殺し屋の役で、ラブシーンもあるのですが、セリフが1つもない。何も話さずに、異様さを感じさせる人物でした。最後は死んでしまうのですが(笑)。

 天知茂さん主演の『江戸川乱歩の美女シリーズ』(テレビ朝日系)では、人を殺さずに美術品を盗もうとする「黄金仮面」というキャラクターを演じました。この2作品は、僕の趣味を生かしてフラメンコギターを弾くシーンがあったので、印象に残っています。

 その後は、格さん役を2000年まで、17年間演じたわけですが、その次に大きな転機を迎えたのは2009年です。特撮番組の『侍戦隊シンケンジャー』と、Eテレの教養バラエティ番組『すイエんサー』のお話を同時期にいただいたんです。

 その2つの番組に出たことで、子供たちにも僕の存在を知ってもらえました。そういう意味でも、僕は役にも人にも恵まれてきたと思います。これからも時代劇に関わっていたいと思っています。京都の太秦にある東映、松竹の撮影所の匂いが好きなんですよね。現場のスタッフは口が悪いけど心は温かいですし。

 今は、80歳という年齢なりの、ジジイの生きざまを見せるような時代劇作品があれば、やってみたいですね。それができたら最高です。

伊吹吾郎(いぶき・ごろう)
1946年1月2日、北海道生まれ。俳優。大学在学中の1966年、第7期東宝ニューフェイスに合格し、東宝俳優養成所に入所。68年にフリーとなり、翌年に時代劇『無用ノ介』(日本テレビ系)の主役に抜擢される。同年、新国劇入りし、映画では東映と契約を結ぶと以後、多くの任侠映画、時代劇などに出演。テレビでは『必殺仕事人』(テレビ朝日系)、『水戸黄門』(TBS系)、『侍戦隊シンケンジャー』(テレビ朝日系)、『環境野郎Dチーム』(フジテレビ系)、『すイエんサー』(Eテレ)など、時代劇からバラエティ番組まで幅広く活躍。フラメンコギター演奏はプロレベルの腕前だ。