中国がIT分野でアメリカに対抗できた理由、トルコに伝わる“国民性”の冗談は日本そっくり?

──エミン氏は日本の製造業を高く評価されていますが、失われた30年をめぐっては、『“モノづくり”に固執するあまりデジタル化が遅れ、後のIT時代にも乗り遅れた』という言説がよく聞かれます。

「それは問題を単純化しすぎています。確かにこの30年間、IT革命に始まり、あらゆるサービスがデジタル化していく中で、日本がそのプラットフォームになれなかったのは事実です。しかし日本に限らず、アメリカ以外でその波に乗れた国はないんです。
 中国だけは例外的にWeChat、アリババなどの巨大なIT産業が育ちましたが、それは中国でアメリカのデジタルサービスが使えないから。また、人口の多い中国はデジタル内需が強いため、自国のサービスだけで回すことができるのです。
 しかし、日本はデジタル内需がそこまで強くないし、アメリカ企業を追い出すような力もありませんよね。実は、同じことはヨーロッパも悩んでいます。もしヨーロッパが、『アメリカとの同盟関係を解消してでも、GoogleやFacebookを追い出す』と言えば独自のプラットフォームが育つかもしれませんが、生活は極めて不便になるでしょう。つまり、デジタルプラットフォームの勝敗は技術力だけの問題ではなく、世界の“覇権”も関わっている深い話なのです」

──日本社会の硬直性や同質性の高さ、足を引っ張り合う組織内政治や旧態依然とした価値観も、成長を阻害している要因だと言われます。外国から来た視点で、この点はどうお感じでしょうか?

「それについて話し出すとキリがありませんが、それが本当に“日本独自の欠点”なのか私には分からない。ただ、私の母国トルコには、こんなジョークがあります。
 ある人が地獄の見学に行ったところ、地獄に落ちた人々が国籍ごとに大きな穴にまとめられて燃やされていた。穴の壁を登って脱出しようとする人は、地獄のスタッフが上から棒で叩き落としていました。
 しかし、トルコ人の穴にだけは棒を持ったスタッフがいないので、見学者は『なぜトルコの穴にはいないのですか?』と尋ねた。するとスタッフは『トルコ人は誰かが登ろうとすると、下から足を引っ張って引きずり落とすから、棒で叩く必要はないんだ』と──。
 これは、私たちが子どもの頃からよく聞かされる自虐ネタです(笑)。つまり、“他人の足を引っ張り合う”といった人間の嫌な性質は、多分どの国の人も持っているんですよ」