イーロン・マスクらが「人間は不要になる」と盛んに煽るシンプルな理由

──戦後、国家システムから生活様式までガラリと変わったこともあり、様々な技術が生まれました。

「そう、戦後にも新しいものは作っているし、イノベーションは起きているんです。では、なぜこうなったかというと、昔の日本人は失うものがなかった。貧しかったからこそ、あらゆるリスクを取って新しいものに挑戦できました。
 しかし、後に世界第2位の経済大国になり、ある程度豊かになって財産や組織を築き上げた結果、今度は“守り”に入ってしまった。
 これが根本的な原因だと思いますが、現在は『このままでは世界に置いていかれる』『生き残れない』という危機感が広がってきていると感じるので、また面白い挑戦が増えてくるのではないかと期待しています」

──イノベーションといえば、AIが世界中で革新を起こしています。ビジネスや教育分野でも広く活用されていますが、エミン氏はAIには懐疑的な立場ですよね。

「まず皆さんが混同してはならないのは、“AIという新技術そのものの価値”と、“株式市場におけるAI相場”は全くの別物だということです。AIがどれほど素晴らしい技術であっても、現在の株価は明らかに実態を超えたバブルです。
 そしてもう一つ、OpenAIやアンソロピック、イーロン・マスクといったテック界の巨頭たちが『あと数年で人間は不要になる』などと盛んに煽っていますよね。私は最初、なぜこれほど極端で馬鹿げたことを言うのかと不思議だったのですが、あれは私たち一般人に向けたメッセージではないんですよ。
 彼らは『これだけすごい技術だから、乗らないと損するよ!』と世界の投資家に向けて言っている。自分の株を高く売りたいポジショントークなので、どこまで煽りでどこまで実用化されるのかは、かなり怪しんだ方がいいでしょう」

エミン・ユルマズ 撮影/松野葉子