達成した瞬間は、嬉しいよりも、びっくり

 とにかく僕は攻め方を考えていた。“ノーヒットノーラン”か、“完全試合”か、どっちを狙うのかで配球が変わる。カウントが3ボール、2ストライクとなった場合、ノーヒットノーラン狙いならフォークを使いたい。でも完全試合を狙うなら、フォークを投げるとボールになる可能性が高いから使えない。それだと使える球種はスライダーになる。どこかでマキに確認をしたいって思ったんだけど、結局、そのカウントになる展開にはならなかったんです。

 最後はインコースに詰まってボールはファーストに。落合(博満)さんが巨人に入って、初めて全力疾走しているのを見ました(笑)。僕がアウトになるのを確認していると、(長嶋)一茂がすでにマキのところに飛んできていてね。僕はマウンドに走っていくのが遅れてしまった。達成した瞬間は、嬉しいよりも、びっくりしたって方が先でしたね。

 同じ年には中日との10・8決戦もありました。シーズンの最終戦で勝った方の優勝が決まるという大一番。僕のプロ生活って、自分が持っている技量からしたら、よう頑張ったなと思っているけど、それはこの試合で勝つことができて自信を持てたことも大きかった。プロ生活の転機となった試合でしたね。

村田真一(むらた・しんいち)
1963年生まれ、兵庫県出身。滝川高校から1981年のドラフト5位で読売ジャイアンツに入団。同期は槙原寛己、吉村禎章、橋本敬司らがいる。長年、巨人の主力捕手として活躍し、1994年、1996年、2000年とリーグ優勝し、1994年、2000年は日本一に。1994年の槙原寛己氏による完全試合でも捕手を務めた。引退後はコーチ(ヘッドコーチなど)も歴任。現在は野球解説者や評論家として活躍中。