鬼才と呼ばれ、熱狂的なファンを擁する漫画家・新井英樹。『宮本から君へ』『ザ・ワールド・イズ・マイン』『キーチ!!』といった作品からは激情がほとばしり、痛みをともなって読者に降りかかる。「20年間の引きこもり」を経て、新たな境地を見出した新井さんのTHE CHANGEを聞いた。【第2回/全5回】

新井英樹 撮影/冨田望

 作業に影響が及ぶからと、自宅では酒は呑まず、必ず飲み屋に足を運ぶという新井英樹さん。

新井「この前、山本英夫さんと会ったんですけど、山本さん、いつもは9時に寝るというのに12時頃まで店で俺のことを待っていてくれて。その日に連絡先を交換したら、すぐに“飲みましょう。いま、渡邊くん来てますから”って、紹介されて」

「山本英夫さん」とは『殺し屋1』『ホムンクルス』の作者、そして「渡邊くん」は、『善悪の屑』『外道の歌』の作者である渡邊ダイスケさんのこと。

 新井さん自身がX(旧Twitter)で「『鬼畜系が揃ったね』と山本さんに言われて否定もできず笑」とつづったように、漫画ファン垂涎の会合があったことを話してくれる。

ーー漫画家さん同士の交流もあるんですね。

新井「いままでは漫画家の知り合いって本っ当に数えるほどしかいなくて。そもそも30歳から50歳までずっと引きこっていましたからね」

ーー20年間ずっとですか? 表に一切出ず?

新井「外に出ても週2回。近所のコンビニに行くだけ。たまに取材に出かけて。近所の人で俺を知っているのは、床屋のおじいさんとおばあさんだけ。あとはずっと家の中にこもって作業して、話すのは家族とアシスタントと担当編集者だけでした。もちろん、飲みに行くこともなかったし」