■代理店マンが肌で感じたPR漫画需要の高まり

 当時は、SNSで活躍する漫画家へのPR案件が、少しずつ増えていた頃。SNSで名が売れ始めていたかっぴーさんにも、仕事が舞い込んだ。

「とある企業の広告案件で、イラストを納品して5万円弱でした。この金額は広告業界では安価で、専業漫画家でやっていくには不安な額。常識的に考えれば、絶対に会社は辞めちゃいけない。でも、僕には手応えがありました。PR漫画の需要の高まりを感じていたんです」

 現在でいうところの“インフルエンサー”のように、Web漫画家によるPR案件のバブルが迫っていることを、広告代理店に勤めていたかっぴーさんは肌で感じ取っていたのだ。

「それで3~5年は漫画家として食っていけるだろうと思ったら、狙いが当たったんです」

 すでに漫画家として働き方の道筋が見えていたのだ。その後、広告案件は減るが、漫画家としての知名度が確立。『左ききのエレン』以降も『アントレース』(『ジャンプスクエア』2018年5月号~2019年3月号)や『15分の少女たちーアイドルのつくりかたー』(『ビッグコミックスピリッツ』2021年44号~2023年20号)など原作者として連載漫画を次々とスタート。

「一生分のお金があるわけではないですが、連載の準備もたくさんしているし、漫画家として幸せだなと感じています。“僕はたぶん、最悪これくらいは稼げる能力がある”とわかったので。会社を辞めたときも、それを感じました。会社員としての自分の価値より、漫画家としての自分の価値のほうが、何倍も高いって。そう確信したから、月4000円の原稿料の時点でも、“いける”と思ったんです」

ーー「月給4000円」。この数字だけ見ると不安しかないですが、先が見えていたんですね。

「一般的には“独立するなら3か月分の生活費を溜めてから”というじゃないですか。僕、貯金なんて会社を辞めた時点で20万円しかありませんでしたからね。でも、独立1年目で会社員時代と比べ物にならないくらい年収が上がりました」

 勝因は、広告案件の単価を上げ続けたことだった。1年目の5万円は「二度とその額で受けない」と決め、3倍、10倍、と少しずつ受注金額を上げた。