石川さんとGACKTの自伝が同じ年に出版

長嶋「別の仕事で石川さんの自伝を読み返すのと同時にもう一冊読んでたのがGACKTの自伝なんですよ。石川さんの自伝が出版されたのが2003年で、GACKTの自伝も2003年なんですね」

コナリ「奇しくも!」

長嶋「GACKTがやってた『MALICE MIZER(マリス・ミゼル)』っていうビジュアル系のバンドが、正に売れて大きくなっていく中、メンバーたちの中でGACKT一人が「今売れてるからって調子に乗るなよ」って思ってたんだけど、メンバーの誰とは特定はしてなかったけど、あとスタッフとか関わってる人達が大きいビジネスマネーが増えてくる中でどんどん傲慢になって自分を見失っていく姿をGACKTが哀しい目で見てるんですね」

コナリ「ああ、GACKTが憂いてる」

石川「そういうのはちょっとあって、初めて会った地方の人に、”うちは『たま』と仕事しない。『たま』嫌いだから”って言われたので、”俺たち何かしました?”って聞いたら当時いた事務所のスタッフが”うちの『たま』はこんな金額じゃやらねーよ”みたいなことを言ってたってことがありましたね。そこまでフォローできない……」

長嶋「『たま』でもそういうことがあったんだ! 自分1人のことじゃなくなるんですね。でもバンドメンバー4人がお互いを浮わつかないようにしようぜって言い合えたっていうのは……」

コナリ「うん、すごい素敵ですよね」

長嶋「ひょうひょうとやっている人たちのお手本になりますね。後に続く人たちも安心できますよね」

コナリ「うんうんうん、ね」

――(編集・平田)「ちょうど昨日サカナクション山口一郎さんのラジオがありまして」

収録の前日、サカナクションの山口一郎さんが『たま』のメジャーデビューアルバム『さんだる』を大特集したラジオを放送、『たま』ファンの間でSNSで話題になっっていた。

石川「あ、NHKラジオね」

――(編集・平田)「番組のラストでとてもいいことをおっしゃってました。”『たま』のこの才能って、普通日の目を浴びないんですよね。埋もれるんですよ。でも、一度日の目を浴びたっていうこの現実が、現代をミュージシャンとして生きている自分にとって希望でもあるし戒めにもなる”って。”ミュージシャン”って言葉を”漫画家”とか”小説家”とか別の表現者に置き換えても成立すると思うんですよね」

長嶋「”表現者”に『たま』のファンがいるのはよく分かりますね」

つづく

■石川浩司(いしかわこうじ)
1984年、「たま」を結成。担当はパーカッション。89年の「イカ天」出演を機に翌90年にメジャーデビュー。2003年の「たま」解散後も精力的に音楽活動を続ける。

■長嶋有(ながしまゆう)
2002年、「猛スピードで母は」が第126回芥川賞受賞。2007年、「夕子ちゃんの近道」が第1回大江健三郎賞受賞。2016年、「三の隣は五号室」が第52回谷崎潤一郎賞受賞。

■コナリミサト(こなりみさと)
「凪のお暇」が「このマンガがすごい!2019」オンナ編第3位、「第65回小学館漫画賞少女向け部門」受賞、黒木華主演でテレビドラマ化。秋田書店「Eleganceイブ」にて連載中。