寝耳に水!「私たち、就職することにしたから」

松永「大学3年生の時に、劇団の仲間から呼び出されて、全員から“私たち、就職することにしたから”って言われたんです。もう次の公演はないという状況になり、ガーンと衝撃を受けた。“えっ、みんな演劇を続けるんじゃなかったの?”と……。

 そうして色々と模索が始まりまして、作家になりたいけれど文学賞を獲れていない、出版社に潜りこんだ方がいいのかな……と思って編集アルバイトを始めてみたり、あとは俳優オーディションにかたっぱしから応募してみました。でも、“お金を払って養成所に入りませんか”っていう案内しか来ないんですよね」

 文筆業や俳優としての将来を模索していた松永さんだったが、最後は音楽活動に活路を見出した。

松永「なにもないと行き詰った時に、今とボーカルは違う人だったのですが、アーバンギャルドはバンドとして母体が残っていたので、“これは音楽をやっていくしかないな”って思ったんです。当時、バンドって非常にクロスオーバーなカルチャーだったんです。プロモーションビデオや、ライブっていうパフォーマンス部分もある。もちろん歌詞という文学表現もできる。

 音楽を主体としたカルチャーが隆盛したのって、90年代後半から00年代だと思うんです。僕が目指しているクロスオーバーなカルチャーをやるには、音楽が一番ポテンシャルが高いと感じたんです。そこから曲中にラップなのか朗読なのかよくわからないものが組み込まれるアーバンギャルドの形ができあがっていった」