当時はまだ珍しい「事故物件」の題材が大きな転機に

 受賞後の新人作家の行く末は、編集者ももちろん熱を込めて見守った。「これからどうするべきか、本を出すために頑張ろう」という決起集会のような集まりもあったという。

「もう芥川賞を狙うとかそういったことではなくて、次の本を出すためにキャッチーな小説を書くことを考えよう、となり、そんなときに私がネットで事故物件に住む人の都市伝説めいた話を見つけてきて。こんな題材はどうかと提案すると、すぐにOKが出たんです。それは大きな転機でしたね」

 それが2011年に出版された『東京ロンダリング』(集英社)だ。いまでこそポピュラーな「事故物件」という存在だが、当時は一部ホラーマニアの間で語られる程度だった。同作の登場人物がやっている、あえて心理的瑕疵(かし)物件に一定期間住み、また次の事故物件へと移り住む……という不動産ロンダリングも、都市伝説めいた存在だった。

 こうした題材を見つけたことを機に、エンターテインメント作品の依頼も舞い込むようになり、作品を書けばまた他社からも声がかかり──という好循環に、原田さん自身も明らかな好転を実感した。