出演した作品が、また新たな仕事への転機へとつながった

 女優として生きることを決めたころに受けたオーディションが、出世作となった『サンクチュアリ -聖域-』(Netflix)。謎めいたホステス・七海役が評価され、仕事の幅が広がっていった。

 そのひとつが、2023年のドラマ『THE TRUTH』(テレ東)。俳優の松田翔太が企画・主演を務め、オダギリジョー菅田将暉が本人役で出演した作品に、寺本も本人役で出演。そして、この作品がきっかけで新しいジャンルの仕事へとつながった。

「『アリエールMiRAi』のウェブCMに出演させていただいたのですが、『THE TRUTH』の脚本を担当された高崎卓馬さんが、脚本を書かれていたんです」

 ウェブCMは8分以上あるドラマ仕立てで、タイトルは『父の失敗』。寺本は大泉洋の娘役を好演しているが、実はテレビCMにも“出演”しているのだという。

「テレビCMで大泉さんと共演しているのは、アニメ『ど根性ガエル』のピョン吉なんですけど、実は私が声を担当しているんです!」

 言われてみれば、かわいらしい声はまさしく寺本莉緒の声!

「最初はウェブCMだけの予定でしたが、“ピョン吉の声って、できたりします?”と聞かれて、“私でいいんですか?”と思ったのですが、“その声がいいんです!”と言っていただいて、声優デビューしました(笑)」

 とは言っても、アニメ『ど根性ガエル』シリーズの放送は、1972年からの2年間と1981年からの1年半。2001年生まれの寺本は知らないと思うのだが……。

「はい、知りませんでした。声を入れてから大泉さんにはお会いしていないんですけど、次にお目にかかったら“似せる気、あるのか!?”と、苦情をいただいたいちゃうかもしれませんね(笑)」

 大泉洋がどう思うかはさておき、CMを見ても気づかない人が続出するほどアニメにぴったりの声質だけに、今後は声優としてのオファーがあるかもしれない。

「いまは、いろいろなお仕事がしたいです。女優としては、さまざまなジャンルの作品に出演したいし、やったことがないような役柄にもチャレンジしたい。いつも心がけているのは“明日はどうなるかわからないのだから、毎日悔いが残らないように精一杯生きよう”ということ。ですから、もしかしたら明日はまったく違う仕事をしているかもしれません」

 寺本莉緒に何度も訪れていたはずの、THE CHANGEの瞬間。しかし彼女はそれが自分のCHANGEだと意識することなく、ここまで歩んできた。そしてきっとこれからも、ポジティブに前だけを見て、寺本莉緒らしく生きていくことだろう。

寺本莉緒 撮影/有坂政晴

寺本莉緒(てらもと・りお)
2001 年生まれ、広島県出身。主な出演作に、映画「別に、友達とかじゃない」、配信ドラマ「サンクチュアリ - 聖域 -」、ドラマ「サブスク彼女」「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」「RoOT / ルート」「新宿野戦病院」など。現在、放送中のNHK連続テレビ小説「おむすび」CM「アリエールMiRAi」出演中。趣味は野球観戦、特技はダンス、ピアノ、英語。