藤田まことの言葉に感動「すごいな、この人は……と」
————ミーちゃんの思いは、わかる。現代に生きる俳優の三田村邦彦として、それは良くないことだと思うわけやな。でも、江戸時代で考えたらどうや? 役人が中間搾取したり、賄賂もらったりして悪いヤツがのさばってる。中村主水としては、許せん。けど、藤田まこととしては、金と引き換えに殺すのはやっぱり良くないと思う。だからおれは、中村主水は最後に、とてつもなく無様な死に方をするべきだと思ってる。そんな思いでやってるんだよ、おれは。
「すごいな、この人は……と感動しましたね。よし、自分も腹をくくってやりとげよう、と思ったら蕁麻疹は消え、プロデューサーに“あと3ヶ月やります”と言って、結局6年半やりました(笑)」
以来、三田村邦彦は、現代物も時代劇もできる俳優として、ドラマや映画に欠かせない存在となり、歌手としても活躍。6回目の年男となる2025年もすでに、さまざまな仕事が予定されている。
「ぼくが今、こうやっていられるのは、24歳で『限りなく透明に近いブルー』をやらせていただいたからです。あの作品をきっかけに、俳優の仕事だけでやっていけるようになったのですから。そして、(村上)龍さんをはじめ、ぼくが何かを断るたび、心に響く言葉をくれた人たちのおかげです」
人生に「たられば」は、ない。
しかし、もし村上龍が、三田村邦彦という無名の俳優にこだわらなかったら……。
もし、蜷川幸雄が「どんな役でもやって間口を広げろ」と怒鳴ってくれなかったら……。
もし、藤田まことが〝中村主水〟との向き合い方について語ってくれなかったら……。
改めて三田村に、もし『限りなく透明に近いブルー』に出演しなかったら……と尋ねたら、こんな答えが返ってきた。
「映画が公開された年に、所属劇団が倒産したので、違う劇団に入っていたのか、別の仕事に就いていたのか……いや、それはありませんね、やっぱり、俳優はやめられなかったと思います」
三田村邦彦(みたむら くにひこ)
1953年10月22日生まれ、新潟県新発田市出身。1979年に映画『限りなく透明に近いブルー』でデビュー。同年『必殺仕事人』(テレビ朝日)の〝飾り職人の秀〟で注目され、『必殺』シリーズのドラマ、映画に多数出演。1980年に『必殺仕事人』の挿入歌『いま走れ、いま生きる』で歌手デビューし、シングル・アルバムを多数リリース。俳優としての主な出演作は『必殺』シリーズのほか、ドラマ『太陽にほえろ!』(1982−1983 日本テレビ)、映画『太陽の蓋』(2016)、舞台『かたき同志』(2021)『アンタッチャブル・ビューティー』(2022)など。2009年より旅番組『おとな旅あるき旅』(テレビ大阪)のMCを務めている。
【作品情報】
舞台『おちか奮闘記』
2025年1月2日(木)〜26日(日)
三越劇場
作:川口松太郎(『浪花女』より)
補綴・演出:成瀬芳一
出演:丘みどり
三田村邦彦、河合雪之丞、賀集利樹、松本慎也、瀬戸摩純 ほかhttps://mitsukoshi.mistore.jp/bunka/product/7050900000000000000002982412.html?rid=7b90e5db143c44a3a02acbf947dfdfa0
https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/mitsukoshi_2501/