NHKのEテレで子育て番組のMCに

――相変わらずのご多忙なんですね(笑)。仕事の幅に広がりは出ましたか?

「俳優の一線から引いてから1年後、ちょうど“子育て”に奮闘している時期に、『すくすく子育て』という子供番組のMCに決まって5年くらい務めさせていただいたんです。その間に“イクメン”という時代に切り替わってきました。ちょうど、国も“男女共同参画社会”を訴え始めた時期なのもあって、タイミングがあっていたのでしょうね」

 時代が追いついてきた、ということなのだろう。『すくすく子育て』はNHKのEテレで2003年から放送されている育児関連の情報番組。照英さんの前のMCは、つるの剛士だった。

「番組や講演会で、“パパがベビーカーを押してもいいじゃないか、ママに時間をあげようじゃないか”とか言ってたら、地方にも呼ばれるようになって。そして、気がついたら男の人が当たり前のように子供を抱っこしている時代になっていました。僕の時なんて周りから白い目で見られていたのに、すごい時代になったなと驚きます」

 それは照英さんが自ら「子育て」について知識や経験を積み重ねて発信していった結果だったのかもしれない。

「“子育て”に関する仕事も多いですから、他のお父さんたちの数倍は参加していると思います。逆に言うと、それは実体験を発信しなきゃという思いと、ある意味ネタ探しでもあります。“父”としても“照英”としても成長させてもらっているなとは思いますね」

 それまでの俳優人生から、家族を大切にする生活へ。 “後悔”したことはないのだろうか。

「今まで芸能界の中では、スターを作り上げるためにも“圧迫感”をすごく感じていました。でも結婚して子供が生まれて、“絶対この家族を守って幸せにしてあげよう”と思ってはや20年。楽しすぎて、もう後戻りをしようと思うこともありません。むしろ、今の仕事もやりたいことをさせてもらっているし、家族と過ごす安らぎもできた。生きてきた50年の間で一番自分が自然体だなと感じますね」

 今が一番自然体だと語る照英さん。やり投げ、モデル、俳優と常に全力投球で臨んできた。もちろん「子育て」にも全力で取り組む中で、その知識や経験が蓄積されていった。

(つづく)

照英(しょうえい)
1974年埼玉県出身。元陸上競技・やり投の選手で、1996年の全日本学生選手権とひろしま国体のやり投で準優勝の経歴を持つ。自己ベストは73m90。大学卒業後、恵まれた体躯を生かしモデルとして活動。1997年に単身で渡米をするなどの経験を活かし、念願であったジョルジオ・アルマーニのコレクション出演を果たす。1998年、「スーパー戦隊シリーズ」『星獣戦隊ギンガマン』のゴウキ / ギンガブルー役で俳優デビュー。2002年から2007年まで、『水戸黄門』に風の鬼若役で出演。その後は俳優・タレント活動だけでなく、司会・デザイナーなど活動の場を広げている。2005年に結婚。2007年に第1子(長男)、2010年に第2子(長女)、2016年に第3子(次女)が誕生。令和2年9月、第40回全日本マスターズ陸上競技選手権大会の槍投げ(M45クラス)に出場し、クラス優勝した。