松平健さんの『マツケンサンバⅡ』を作曲、『身毒丸』、『ハムレット』など、数多くの舞台音楽に携わられた宮川彬良さん。6月には音楽・演奏を担当する舞台『ナツユメ』が上演される。また、『マツケンサンバⅡ』の愛される理由や、“アキラさん”として出演したNHK教育テレビ(Eテレ)の『クインテット』で抱いた思いなど、じっくりと語っていただいた。【第2回/全4回】

宮川彬良 撮影/三浦龍司

 宮川彬良さんの父・宮川泰さんは、ザ・ピーナッツなど、多くのヒット曲を手掛け、『宇宙戦艦ヤマト』や数多くのテレビ番組主題歌などを作曲した音楽家。彬良さんの「CHANGE」を考えるうえで父・泰さんは、当然外せない存在だ。

「目の前にいる親が憧れの人であり、影響を与えられた人ですからね。一番大きな存在で、何かあればそこに立ち帰ることができる人でもあり、あるときは反面教師にもなる。僕にとっての大動脈みたいな存在ですね」

「大きな存在」である父をより強く意識することになったのは、1969年10月、バラエティ番組『巨泉・前武のゲバゲバ90分!』(日本テレビ系)のスタート直後。

「父の作るものは、基本大人向けだったので子どもの僕には遠いものだったんですけど、『ゲバゲバ90分!』のテーマを作ったことで、もう学校じゅうの話題になったんです。僕が8歳のころでしたが、通学路でみんな歌いながら登校するんです。

 それがものすごく衝撃的で、すごく誇らしいという思いもあった一方で、ちょっとどこか怖いと感じたんです。それまでも“作曲家になりたい”みたいなことを言ってたので、“アキラくん作曲家になるんだよね、いいねぇ”と周りの大人が喜ぶので、無邪気に言ってたんだけど、“作曲って何なんだこれ?”って子ども心に思ったんです。みんなが口ずさんでて、それはすごく誇らしいんだけど、一方には、ちょっと恐ろしい、戦慄が走るような感覚。これ、半端じゃないぞ、と」