誰しも平等に老いるのは、クリエイターにとっても例外ではありません。自身の心身からくる老いに抗うのか受け入れるのか、そしてクリエイションへの影響……。老いと仕事(クリエイション)の関係性、ひいては男から見る老いの景色と女から見える景色はどのようなものなのでしょうか。偶然、お二人とも、自身をテーマにした作品を上梓したばかり。今回、同年代であり、お互いの作品のファンだと話す漫画家・ひうらさとるさん(58歳)と、編集者であり大学教授も務める伊藤ガビンさん(62歳)に、それぞれの近況と老いについて伺いました。【第4回/全4回】

ーーご自身の老後についてはどのように考えられていますか?
ひうら:人生100年時代とは言いますけど、自分より上の世代や、親の世代の人を見てると、元気で動けるのは70前半までなのかなと感じますね。逆にいえば、私個人にそれを当てはめると、残された時間はあと10年ちょっと。そんなにリミットまで余裕はないと思うし、動けなくなって、お金をいっぱい持っていてもしょうがないから、今のうちに使っちゃおうかなと。だから、あと10年は遊ぼうかなと思ってます(笑)。
ガビン:ひうらさんの旅の年表を見ると、本当に世界中を旅されていますね。僕もこれからも多少は海外に出ると思うけど、行く可能性から除外されるところもでてくる。たとえば南極には行けないと思うんですよね。
ひうら:体力とか気力を考えるとそうですよね。
ガビン:だから、そうやって選択肢は減ってきますよね。
ひうら:でも、そのぶん迷いがなくなるから、フットワークも軽くなると思うんですよね。そうやって前向きに考えればいいと思う。あと、「暇になったらやろう」と思ってることって、結局暇になってもやらないことが多いじゃないですか。
ガビン:絶対しない。経験上もそう思います(笑)。
ひうら:ですよね(笑)。だから、そんな先のことを考えるよりも、興味のあることを先にやってしまおうと。東海林のり子さんが仰ってたんだけど、「終活なんてしなくていい。残された貴重な時間を物の片付けに使ってどうすんだ、死んだら全部燃やしてもらえ」と(笑)。それを聞いて、物の整理はしなくてもいいかなと思い始めました。服も断捨離しなくていい。子どもが着てくれてもいいし、いらかったら燃やせ燃やせ!と(笑)。