「今日も現場で闘ってくれている英雄たちへの敬意を込めて、この役に徹してみたいと思っていました」
――DMATの存在やその活躍を知らなかった人も多いと思うのですが、真田を演じる上で準備したことや、心掛けたことはありましたか?
「世界中が先の見えない暗闇に包まれていたあの時、様々な社会問題も表出し、まるで世界がひっくり返るような時間を過ごしていましたよね。そうした中で、それでも未来に光を灯し続けてくれた医療従事者の方々に対して、畏敬の念を抱いていました。医療従事者の方々やDMATの皆さん、今日も現場で闘ってくれている英雄たちへの敬意を込めて、この役に徹してみたいと思っていました」
――ダイヤモンド・プリンセス号で発生した集団感染時に、実際に乗船していたDMATの方が本作の監修に入っていますが、お話の中で特に印象に残っていることはありますか?
「撮影当時、能登半島地震で大変な時期でしたが、それでも合間を縫って交代で現場にいてくださいました。本当に頭が下がる思いでしたし、ダイヤモンド・プリンセス号の船内で何があったのか、どういう環境下で、どのような心境だったのか、患者さんとどのように接し、医師同士はどう接していたのか、知り得ないことをいつでも直接お伺いできる環境があったことは、本当に大きな助けになりました。
先生方はみなさん“大したことはやっていないです”と口を揃えて謙遜されるんです。それを聞いて、目の前の命に対する清々しいまでのまっすぐな善意を感じました。これは決して物語上のお話ではなく、たった5年前に起きた事実です。ある日突然、3700人の命を託され、未知のウイルスと対峙し奮闘された、ボランティアの医師団がいたという事実。フィクションを超えるような出来事で、信じられないような話だなと思ってしまいます。
そしてあの時、懸命に対応にあたってくださったDMATの方々のおかげで、いまある命があるということ。そのことに心から感動し、人の善意の力強さのようなものを感じました」
――今回の企画、脚本、プロデュースを務めた増本淳さんの徹底した取材・リサーチ力には感服しました。
「増本さんから直接オファーをいただき、その後も色々とお話をさせていただきながら非常にやりやすい形で撮影に臨むことができました。増本さんから最初にお電話を頂き、今作の出演のオファーを受けたときは、まさに劇中の真田先生がある日突然電話で召集されるシーンさながらでした。
増本さんの徹底した緻密なリサーチ力には度肝を抜かされました。DMATの先生方も、全く狂いがないとおっしゃるほどで、何年もかけてこの作品を大事に丁寧に育ててこられた、並々ならぬ熱意と信念を感じることができました。
本作のように事実に基づくセンシティブな内容を扱う作品において、設計図となる脚本が強く信頼できたこと、そして総責任者として増本さんのような大きな存在がいてくれたこと、そこに関根監督の鋭くフェアで温かい視座と、今作への奉仕に満ちたリーダーシップが加わり、とても心強い体制のもと、最後までブレずに真田という役を演じることができたと思っています」