「ネガティブなことは考えずに前を向いていきましょう」という姿勢に一石を投じる

――コロナ禍を描くことが日本映画ではタブーとされているのは、なぜなのでしょうか?

「この5年でコロナを題材にした作品は数多く生まれましたが、この国でこれだけのスケールで描かれるのは本作が初めてです。“ネガティブなことは考えずに前を向いていきましょう”という考え方がビジネスにおける主流を占めていることは、映画界だけに限らないですよね。今の日本映画における環境において、企画が簡単に通るものではないということは確かだと思います」

 どの質問にも、真剣に言葉を選び、答えを探す姿が印象的だった池松さん。日本映画でコロナ禍という有事を題材にした大作に挑んだのも、俳優としてのひとつの挑戦だったのではないか。あの時、何が起きて、どんな人たちの活躍や思いがあったのかを知ること、それを誰かと話し合うことは、これからの未来を生きていく上で、必ず役に立つことになるだろう。

取材・文/根津香菜子

いけまつ・そうすけ
1990年7月9日、福岡県生まれ。2001年、劇団四季ミュージカル『ライオンキング』のヤングシンバ役でデビュー。トム・クルーズ主演『ラスト サムライ』(03)でスクリーンデビュー。その後数々の映画やドラマに出演し、数多くの映画賞を受賞している。昨年は映画『ぼくのお日さま』、『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』、『本心』が公開され、今後の待機作としてNHKで8月に放送される『終戦80年ドラマ シミュレーション 昭和16年夏の敗戦』、映画『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』、さらに26年度NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』が控える。

『フロントライン』
監督:関根光才、企画・脚本・プロデュース:増本淳、
出演:小栗旬松坂桃李、池松壮亮、森七菜、桜井ユキ、美村里江、吹越満、光石研、滝藤賢一、窪塚洋介
https://wwws.warnerbros.co.jp/frontline/
6月13日(金)より全国公開中