「命が目の前にある、だから自分ができることをただ懸命にする」

――池松さんが演じた真田をはじめ、DMATの隊員たちは肉体的にも精神的にもギリギリの日々を送りながらも、次々と体調不良を訴える患者さんのもとに駆けつけます。憶測だけの報道や、家族にまで及ぶ誹謗中傷にも耐えながら、それでも任務を放棄せずに立ち向かう人たちが描かれていますが、その強さの根源はどんなところにあったと思いますか?

「僕もその根源を知りたくて先生方に聞いてみたんですが、“何も考えていなかった”と笑って答えてくれました。

 命が目の前にある、だから自分ができることをただ懸命にする。それだけだったんだと思いました。それからある先生が、“後先のことを考えていたら、お医者さんなんてできませんよ”と教えてくれました。本当にその通りだなと思いました。その淀みのないまっすぐな心に感動しました」

――今のお話を聞いても、本作を見ても、そういう人たちがこの国にいるということだけで、救われたような気持ちになります。

「本当にそう思います。そのことをこの映画が伝えることで、誰かの生きる力になると信じています。僕のいとこに医学部6年生の女の子がいるんですが、どの科に進むのか、いま進路を迫られる時期で。この国の先行きや将来の不安のことを考えて色々と迷っていたようなのですが、いち早くこの映画を観てくれて。

“医者になるということの原点を思い出させてくれてありがとう”というメッセージをくれて。その言葉を受けとって、この作品に携わることができて本当によかったなと心から思いました」