マスコミを描くことは「大きな覚悟が必要だったはずです」

――本作では、報道のあり方やSNS上での誹謗中傷なども描いています。人を傷つけるのは人間だけど、救うことができるのも人間であり、そうであってほしいと信じたいと感じる作品でしたが、池松さんはこの作品のどんなところに希望を見出しましたか?

「まず、今作が報道やSNSの疑うべき面を、臆さず正面から描いている点は素晴らしいことだと思います。元々、テレビ局にいらっしゃった増本さんが、マスコミのあり方について描くということは、きっと大きな覚悟が必要だったはずです。

 パンデミックによって表出した人間の善意の可能性、露悪的な側面も含め、多面的に我々についての物語を描くことができていると感じます。あの日、世界で起きていた真実に向き合い、映画としてひとつの答えを出すことに挑戦している今作の誠実な姿勢にとても感動しています」

――過去のインタビューで「日本の映画の価値を上げていきたい」とお話しされていた記事を拝見しました。本作を映画として世に出す意義を、今どのようにお考えですか?

「増本さんと関根さんの挑戦にみんなが乗りこみ、ダイナミックな映像で映した、エンターテインメント性と人間ドラマが見事に調和された、現代的な大作映画をお届けできることにとても大きな意義を感じています」

 ダイヤモンド・プリンセス号が横浜に入港後、健康診断と有症状者の検体採取により10人の感染者が確認されたことで、日本が初めて治療法不明の未知のウイルスに直面することとなった。それが日本で起きたことは偶然にすぎないが、報道のあり方や未知のウイルスへの対応なども含め、その出来事を日本で映画にし、世界に発信するということが本作の意義のひとつだったように思う。俳優部と制作陣の覚悟と挑戦を乗せたこの作品に、「もし自分だったらどうするか」と想像して考えてみることが、観客としての責任のように感じた。

取材・文/根津香菜子

いけまつ・そうすけ
1990年7月9日、福岡県生まれ。2001年、劇団四季ミュージカル『ライオンキング』のヤングシンバ役でデビュー。トム・クルーズ主演『ラスト サムライ』(03)でスクリーンデビュー。その後数々の映画やドラマに出演し、数多くの映画賞を受賞している。昨年は映画『ぼくのお日さま』、『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』、『本心』が公開され、今後の待機作としてNHKで8月に放送される『終戦80年ドラマ シミュレーション 昭和16年夏の敗戦』、映画『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』、さらに26年度NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』が控える。

『フロントライン』
監督:関根光才、企画・脚本・プロデュース:増本淳、
出演:小栗旬松坂桃李、池松壮亮、森七菜、桜井ユキ、美村里江、吹越満、光石研、滝藤賢一、窪塚洋介
https://wwws.warnerbros.co.jp/frontline/
6月13日(金)より全国公開中