鳥肌が立つほどの喜び

 窪塚さんは東京へ向かう新幹線の車窓からなにを見たのだろうか?

窪塚「ちょうどそのとき、雪が降っていたんです。窓から見えた関ヶ原が真っ白な世界で、それを見たときに、あぁ、戻った、フラットになったって、自分的に思ったんです。

 なにもなくまっさらな状態が可視化されて目の前にあらわれて……ちょっとした時間だったけど、釘づけになりましたね」

 窪塚さんが数ある「CHANGE」の中であげていた『沈黙-サイレンス-』の仕事。それを終えたあと、新幹線の車窓から見たまっさらな景色が、自分本体と重なったのかもしれない。

窪塚「04年の転落事故から13年。ちょっと時間がかかったかなというのはあるけれど、じわじわときて、そこで戻れた、という感じでした。

 そのときはひとりでした。ひとりだったのも良かったと思います。うれしかったですね。なんか、ちょっと鳥肌が立つぐらいうれしかったんです」

 04年の転落事故に始まり、長い時間を経て雪の関ヶ原を見た瞬間に感じた、かけがえのない感情。

 取材の最後に撮った動画で、窪塚さんは改めて「THE CHANGE」について「やはり、落っこっちゃったことかな」と、微笑みながら語ってくれた。

 

■窪塚洋介(くぼづかようすけ)
1979年神奈川県横須賀市生まれ。95年に『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)でデビュー。2000年に放送されたドラマ『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)に出演し脚光を浴びる。17年にはマーティン・スコセッシ監督の映画『沈黙-サイレンス-』でハリウッドデビュー。俳優以外にもレゲエDeejay、執筆などでも活躍。出演する最新映画『スイート・マイホーム』では、主人公の清沢賢二(窪田正孝/35)の兄、清沢聡を演じる。

映画『スイート・マイホーム』
冬が厳しい長野。スポーツインストラクターの清沢賢二は「まほうの家」と謳われた一軒のモデルハウスに心を奪われる。寒がりの妻と娘のために、たった1台のエアコンで家中を隅々まで暖められるというその家を建てる決心をする賢二。新居が完成し、家族に2人目の娘も加わって、一家は幸せの絶頂にいた。ところが、その家に越した直後から奇妙な出来事が起こり始める。まとわりつく様な何かの気配。赤ん坊の瞳に映るおそろしい影。地下に捕らわれ、泣き叫ぶ娘。次第に明かされる、秘められた過去‥‥。「家」を取り巻く恐怖の連鎖は家族だけに留まらず、関係者の怪死などに波及し始め、そして予想を超えた衝撃の結末に向けて加速していく。

監督:齊藤 工
原作:神津凛子「スイート・マイホーム」(講談社文庫)
出演:窪田正孝、蓮佛美沙子奈緒、中島 歩、里々佳、松角洋平、根岸季衣、窪塚洋介
配給:日活、東京テアトル
©2023『スイート・マイホーム』製作委員会 ©神津凛子/講談社
2023年9月1日 全国公開