“生涯声優”の次のステップ「葛城ミサト・28歳、これだ!と思いました。まさに、私がやりたかった“大人の女性”」
ーージレンマがあったのですね。
「生意気にもね。いまはそういうオファーがあったら『それ、言っちゃいけないやつですよ』と返しちゃうんです(笑)、その役がかわいそうだなと思うから。一見するとうさぎと同じように、元気でキャピキャピした女の子であっても、それぞれが持っている背景はまったく違う。だからこそ、私は別物として演じています。まあ結果、同じようなお芝居になってしまうのは……それは自分が未熟なのでしょうがないですね(笑)」
“うさぎのようなキャラクター”を求められつつも、三石さん自身は前を見据えていた。
「うさぎちゃんをやっている頃から『おばあちゃんになるまで声優をやりたい』と思っていたので、次のステップとして大人の女性もやっていきたかったんです。そのために"いい女”を演じるにはどうしたらいいのかなと、先輩に聞き回ったり、ステキなお芝居をする先輩を一生懸命観察して、家で真似したりしました」
のちに葛城ミサトという三石さんの代表的な役と出合うことになる、『新世紀エヴァンゲリオン』のオーディションを受けることになったのは、ちょうどそんなときだった。
「『葛城ミサト・28歳』、これだ!と思いました。まさに、私がやりたかった“大人の女性”だって。それはもう、やる気満々で挑んだんですが、私はここでもつまずいてしまって。大人っぽく演じれば演じるほど、なぜか空々しくなってしまう。いま考えてみればわかるんですが、“大人っぽい”=“大人”ではないですからね。しっくりきていないなあと思っていたところ、プロデューサーから『ことちゃんだけ出遅れているね』と、恐ろしい指摘をいただいて。うわ、見抜かれた!って」
ーー確かに、そんなプレッシャーのかかることを言われたら怖いですね。
「スタジオにはすごいエネルギーを持っている人たちが集まり、地場が渦巻いているようでした。そんななかでなんて恐ろしい……と。そう言われて、いろいろ考えをこねくり回しましたが、ふとミサトが当時の私と同じ年だということに気づいたんです。それなら“考え過ぎずに、思ったままにやればいいのかも!?」って。まさに、一本の救いの糸を見つけたような気持ちでした。作りこまずに心のままにしゃべることの大切さを、改めて思い出しました。『大人の女性がやりたい』と自分のことばかり考えてしまって、目が曇っていたんだと思います」