「作品との関わり方がこれまでとはまったく違っていたな、と気づいたんです」
「舞台の本番期間に、監督の三宅唱さんからご連絡をいただきまして、プロデューサーの松井宏さんとおふたりで芝居を見に来てくださったんです。三宅さんとは“二度めまして”くらいの間柄だったんですけど、終演後に、3人で劇場近くの焼き肉屋さんに行ったんです」
ジュージューと肉が焼ける音の中で、監督はこう言った。
──一緒に、映画を作りませんか?
「そこから、撮影までの1年間くらい、ビリヤードやボウリングで遊んだり、深い時間までお酒を飲んだりして、わりと濃厚な時間を過ごさせていただきました。完成した映画を見たとき、そうやって過ごした時間や、ぼくらの関係性が映画に反映されていると感じると同時に、作品との関わり方がこれまでとはまったく違っていたな、と気づいたんです」
それまでは、台本に書かれていることを現場で形にしていくのが、俳優の仕事だと思ってきた。だから、台本の直しに対して自分から意見を述べることもなかったし、完成した台本を読むときは「自分はこれをどう表現するか?」ということを念頭においていた。
「でも『きみの鳥はうたえる』では、作品づくりの種を蒔(ま)くあたりのところから参加させてもらって、台本の直しにも、口は出さないけど感想は伝えましたし、衣装合わせでも“こんな服がいいんじゃないかな”と自分から言ったりして、作品をつくることに、ちょっと踏み込んでいったんですね」
三宅監督が柄本に言ったのが、「作品に出演してくれませんか?」ではなく、「一緒に、作りませんか?」だったときから、監督の中ではそんな思いがあったのかもしれない。
「そこからですね、作品との関わり方に変化が起きたのは。ですから、『きみの鳥はうたえる』は、ぼくにとって大きな転換期だったと思います」
(つづく)
■作品情報
映画『木挽町のあだ討ち』
2月27日(金)全国公開
原作:永井紗耶子
『木挽町のあだ討ち』(新潮文庫刊)
監督・脚本:源孝志
出演:柄本佑
⻑尾謙杜、瀬戸康史、滝藤賢一
山口馬木也、愛希れいか、イモトアヤコ、冨家ノリマサ、野村周平
高橋和也、正名僕蔵、本田博太郎、石橋蓮司
沢口靖子、北村一輝
渡辺謙
主題歌:「人生は夢だらけ」椎名林檎(EMI Records / UNIVERSAL MUSIC)
(C)2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会
(C)2023永井紗耶子/新潮社