「この世界でなんとか生き残っていきたいと心に決めた場所」
──映画『226』で本木さんは、河野寿さんという実在の青年将校の役を演じられ、第13回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞されましたね。
本木「この作品を撮ったのが、奇しくも『黒牢城』の撮影でも使用された太秦の松竹京都撮影所だったんですよ。ここの素晴らしいところは、床が土のスタジオが残っているんです。土のスタジオは、冬はすごく冷たくて寒く、土ぼこりは立つしで決して身体に良い環境とは言えないんですが、地べたに這いつくばる思いで新たな世界に乗り出した自分の気分には、すごく合っていました。過酷であればあるほど頑張れる、みたいな」
──土の地面を踏みしめて、カッコいいアイドルから、泥臭さもある俳優へCHANGEされたということですね。
本木「私が演じさせていただいた『河野』は、思いを遂げられずに自決することになるのですが、荒々しい海が見える崖の木の下に倒れ伏している……というシーンを、極寒の玄界灘で撮影しました。凍えるような寒さの中、冷たい地面に顔をつけて、死体として息を止めていたときの土の感触は、まだ頬に残っています」
──『黒牢城』では、どのシーンを『226』と同じスタジオで撮影されたのですか?
本木「菅田将暉さん演じる黒田官兵衛とのシーンです。わたしが演じた荒木村重は、織田方の使者としてやって来た官兵衛を地下牢に幽閉するわけですが、あろうことか、城内で起きた不可解な事件の謎を解けと命令するんですね。そのシーンを撮ったのが、40年近く前に『226』を撮った土のスタジオでした」
──撮影のときは、当時のことが頭をよぎりましたか?
本木「はい、勝手に感慨にふけってしまいました。私にとっては、この世界でなんとか生き残っていきたいと心に決めた場所であり、撮影でしたから」