「人間って、本当にそういう愚かで愛おしい生き物だよなって」

 完成した本編を観て、彼女の心にはある深い思いがよぎったという。

「実は、本作を含めて、“死”と向き合う役柄との出会いが重なっています。だから、死というものに向き合わざるを得ない時間が本当に長くて。この作品に取り組んでいる間も、『自分はどういう終わり方をするんだろう』と考えたりしましたね。

死をテーマにした作品を観終わった後って、誰もが『これからの時間を大切にしよう』とか『大事な人に感謝を伝えよう』と思うはずなんです。でも、日々の忙しさに追われると、どうしてもそういう気持ちを忘れちゃうんですよね。人間って、本当にそういう愚かで愛おしい生き物だよなって、改めて思わされました」

 そんな桜井さんが芸能界入りを果たしたきっかけは、2014年の「岡山美少女・美人コンテスト」で美少女グランプリ受賞。しかし、当初の応募動機は「副賞の東京ディズニーランドのチケットに釣られて」という飾らないものだった。
翌年にはCMに起用され、2016年に舞台『それいゆ』で俳優としてのスタートを切る。以降、舞台、映画、ドラマと多岐にわたるステージで活躍を続けてきた。

 順風満帆に見えるキャリアだが、デビューから5、6年が経った頃、彼女は自身に大きな「CHANGE」をもたらす出来事を経験したという。
 
「デビューした17歳の頃から、ずっと二人三脚で歩んできたマネージャーさんとの別れがあったんです。その方は私をすごく厳しく育てて下さいました。10代で右も左も分からないまま、いきなり大人の世界に飛び込んだ私。特に芸能界に強い憧れがあって入ったわけではなかったのに、みんなが喉から手が出るほど欲しいチャンスが、私が憧れを抱く前に突然やってきてしまったんです。マネージャーさんは一生懸命売り込んでくれて、私もそれに必死に食らいついていきました。

理不尽なことで怒られたりはしませんでしたが、忙しい日々の中で、心が擦り減っていく感覚がありました。そんな中で『これは私が望んでやっていることじゃないかもしれない。やれって言われたからやっているんだ』という、少し甘えのような感情が芽生えていたんです。だから厳しく指導されると、『もう辞めたい』と思ってしまう時もありました。でも、そう弱音を吐くと、必ず『一緒に頑張っていこう!』と励ましてくれる、本当に愛情深いマネージャーさんだったんです」

桜井日奈子 撮影/有坂政晴 ヘアメイク/Hitomi(Chrysanthemum) スタイリスト/有咲