貧困・教育・格差…凄惨な事件の背景に潜む社会問題に葛藤
──そこまで思い入れのあった検事という仕事を捨ててまで政治家になろうと思ったきっかけは何だったのでしょう。
「検事の仕事自体は非常にやりがいがありました。東京地検から始まって、千葉地検、それから愛知県の名古屋地方検察庁岡崎支部というところに行って。その時に扱った事件がキャリアチェンジを決断する大きな契機になったんです。
2006年に岡崎市の乙川沿いで野宿生活をしていた高齢女性が金属パイプなどで撲殺されるという事件が起きた。岡崎ってわりと平穏な地方都市で、そんな凄惨な殺人事件が起きるとは思えないような土地柄でした。
しかも、逮捕された犯人は市内の中学生3人と20代の無職男性1人だった。私は主任検事として取り調べをしたんですけど、向き合ってみると、まだあどけない中学生なんですよ。それが余計に心を締め付けられる思いがして、その事件に現代社会の問題が凝縮されていると感じたんです。
賽銭泥棒から始まり、万引き、強盗、最後は人の命まで奪ってしまった中学生たち。彼らを支えきれなかった教育の問題もあるし、ひとりだけ成人していた男性の失業問題、さらには高齢者福祉の問題もあるし、貧困問題もある。
当時は長く続いた自民党政権で「自己責任、自助」が強調された政治が続いていて、でもその時に、誰もが自己責任を取れるわけではないし、負えなかった責任は回り回って一番弱い立場の人にツケが回ってくるんだという現場のリアルを突きつけられた。それは強烈な体験でした。もうちょっと助け合いの社会、政治があるべきではないかと思って、政治という未知の世界に飛び込むことになったんですよね」
(つづく)