少年隊として『仮面舞踏会』でデビュー。以後ヒットを連発する一方、俳優としても多くの作品に出演する錦織一清さん。現在は舞台演出家として活躍する一方音楽活動も展開する彼のTHE CHANGEとはーー。【第1回/全2回】

錦織一清 撮影/有坂政晴

 そんな頃に出会ったのが、つかこうへいさん。声を掛けていただいて『蒲田行進曲』で銀ちゃんを演じたのは33歳のときでした。つかさんの芝居には極東の匂いがするし、ときにミュージカルを揶揄したりもする。それまでの僕がやっていたこととは対極の世界です。本番でも真っ黒な稽古着のまま演じることが多いし、セットもない。「客は役者を観に来るんだから余計なものはいらない」という主義の方でした。

 稽古では歩き方から徹底的に指導されて、台本3ページ分くらいのセリフを客席に向かってしゃべりまくることもある。声が出なくなって病院に通ったことは一度や二度じゃありません。そうやって苦難を乗り越えるうちに、それまで自分が目指していた、うまい芝居に興味がなくなりました。歌や踊り、セリフ回しがうまいことと、お客さんが感動することは違うと思うようになった。これが3つ目の分岐点です。

 同じ頃、こんなことがありました。当時の僕はハイブランドの洋服を買いあさっていたのですが、冬のある日、友人が僕の着ているフリースジャケットのタグを見て「なんだ、ユニクロじゃないんだ」って言ったんです。そのとき「そうか、世の中の流れはそっちなんだ。俺がずれてきているんだな」と。もともとクルマに関しては国産のセダン派でしたけど、それ以来、着飾ることをしなくなりました。高級品を身につけても自分の価値が上がるわけじゃないですからね。

 お恥ずかしいことに今年、ソロとして初めての写真集『言魂』を出したのですが、ほとんどが私服です。横浜のバーで撮影したものだけは用意してもらいましたけど、それはそういう場にふさわしい服を自分が持っていなかったからでね。ふだんの僕を見ていただくには私服が一番いいと思ったわけです。