ちゃんとおじいちゃんに見えるのが僕の目標
ネットを見ると「衝撃の現在」みたいな悪意のある書き込みもありますが(笑)、老いていく過程を見せるのが僕らの仕事の宿命でもある。若々しいに越したことはないけれど、おじいちゃんの年齢になったら、ちゃんとおじいちゃんに見えるのが僕の目標です。そうじゃないと役も来ませんしね。
自分にとってのカッコよさは見てくれではなく、生きざま。人からどう見られようとも、好きなことを突き詰めていきたいと考えています。幸い僕の周りには一回り上の岸田敏志さんや、今年80歳になる西岡德馬さんなど青年然とした先輩たちがいる。皆さん、肉体的には白髪が増えたりしていますけど、気力が漲っていて、そこにカッコよさを感じます。「人間力」は年を重ねてから出るほうれい線に現れるんじゃないでしょうか。舞台の場合、演じるうえで含蓄を出せるのは60代になってから。もちろんアグレッシブに動く部分では20代に負けてしまうけど、役の幅が広がり、表現できることが増えるのはここからだと思っています。
40代を迎えた頃は「俺がやっていることは社会に貢献しているか」と考えていましたが、何本も仕事がなくなったコロナ禍を経た今、生意気なことを言わせてもらうと、人を幸せにする仕事だと思うようになりました。舞台からお客さんの喜ぶ顔を見ることが、今の自分にとっては最高に嬉しい瞬間です。
この年になって嬉しいのはもうひとつ。肩の力を入れずに物事を楽しめるようになったことです。パパイヤくんとのユニットでは、お互いの失敗も笑いながらツッコミ合うことができる。若いときはそれで揉めたりするけれども、今はそういうことが面白くてしょうがない。オヤジ2人が楽しみながらライブをしていますので、同世代の男性にも気軽に遊びに来ていただけたら嬉しいです。
錦織一清(にしきおり・かずきよ)
1965年、東京都生まれ。85年、少年隊として『仮面舞踏会』でデビュー。以後ヒットを連発する一方、俳優としても多くの作品に出演。現在は舞台演出家としても活躍する一方、パパイヤ鈴木とのユニット「FunkyDiamond18」など音楽活動も展開中。映画監督デビュー作『僕は瞳に恋してる』は2028年公開予定。
舞台『あゝ同期の桜』
(演出・出演:錦織一清)
2015年の初演以来、再演を重ねている、若き学徒兵たちの“帰らざる青春”の物語。錦織が「生涯を賭けて後世に伝えたい作品」と位置づけており、今年も東京・三越劇場(8月13日~17日)と木更津・かずさアカデミアホール(8月22日)で上演される。