「途方に暮れた」映画『沖晴くんの涙を殺して』では“喜び”以外の感情をなくした高校生という難役に挑戦

「その時間軸の中で、人間の心の奥にある、核心を突いた部分が積み重なって、何度も心が震えました。物語のはじまりはファンタジーっぽいのに、読み進めるにつれてヒューマンドラマになっていく。つらいことも多いけど、温かい作品だなと思いましたね」

 京香と出会ったばかりのころ、喜びの感情だけ残った沖晴は、津波で家族を亡くしたことも笑顔で語る。

「そんなふうにひとつの感情しか持てない役は、もちろんこれまでに経験がないし、難しい役だなというのが、第一印象でした。でも、読み進んでいくうちに物語に没頭していって、頭の中に浮かぶ情景の中にいる少年がぼくではなくなり……読み終えてから“どうアプローチしていこう?”と、改めて途方に暮れたという感じでしたね」

木戸大聖 撮影/冨田望