28年間『鬼平犯科帳』で同心・木村忠吾役を演じ、最新作『本所の銕』より密偵・相模の彦十役で出演する尾美としのり。彼のTHE CHANGEに迫るーー。【第2回/全2回】
松本幸四郎さんの『鬼平犯科帳』で密偵・“相模の彦十”をやってくださいと言われたときに真っ先に思ったのは、「ぼくは関わらないほうがいい」ということでした。
だって、昔から『鬼平』を好きでいてくださるファンの方はどうしても、「あれ? 忠吾が彦十をやってる」って思ってしまうでしょ? 純粋に、幸四郎さんの『鬼平』を楽しんでいたのに、余計なことが頭をよぎってしまう。だから、オファーの話を聞かされたときは「無理無理」とマネージャーに即答しました。ところが、原作者の池波正太郎先生の事務所の方も、監督も、松本幸四郎さんまでもが「尾美に彦十を」と言ってくださっているというではありませんか……。
そこまで言っていただいて固辞し続けるのも逆に失礼だと思い、お受けすることにしたのですが、ひとつだけ事前にお伝えしたのは、「ぼくの中での“相模の彦十”は(三代目江戸家)猫八師匠(中村吉右衛門主演シリーズで彦十を演じた)なので、そっちによっちゃいますよ」と。
10年ぶりに行った京都の撮影現場では「おかえりなさい」と迎えていただいて気恥ずかしい思いもありながら、懐かしかったし嬉しかったですね。ぼくは幸四郎さん主演の『鬼平犯科帳』シリーズに第8弾『本所の銕』と第9弾『密告』から出演させてもらうことになったのですが、『本所の銕』では、若き日の平蔵・長谷川銕三郎を市川染五郎さんが演じていらっしゃって、幸四郎・染五郎父子と共演させていただくという幸運に恵まれました。