経営する旅館の風呂が被災者から感謝された理由
──住民の方から聞けたことはありましたか。
「家族風呂なので待ち時間ができてしまうんですが、その間は広間で待っていただいて。待っている皆さんの話を聞くと、水に困っている方がたくさんいました。特に、井戸水を使っているお家だと、濁った水が全く止まらなかったり、出なくなったりして。
水道と違い、井戸水の工事は半年から1年も待たないと業者さんが来られない地域もあるので、いつ元に戻れるかわからない大変さがあると聞きました」
──被災者の方からの言葉で、何か印象に残っているものはありますか?
「うちの旅館は大浴場がなくて家族風呂なんですが、それがかえって『プライバシーを保ててよかった』と家族連れの方から感謝されました。お母さん1人で子どもが2人や3人いる家庭だと、目が届くか心配でなかなか温泉旅館にも行けない……という悩みがあって。
家族風呂のサイズが、ファミリーにはぴったりでした。それから、性別の区別があるお風呂に入りづらい、ジェンダーの悩みを持っていらっしゃる方からも声をかけていただきました。こういう悩みは、災害の前だと『わがまま』のように捉えられてしまうかもしれません。そのせいで遠慮して、我慢しなくていいはずのことまで我慢してしまう。でもそういう悩みにも応えられて、感謝をいただけたのは嬉しかったですし、この旅館のおかげです」
昨今、もはや毎月・毎週というペースでどこかが災害に見舞われる日本列島。スザンヌさんの経験も他人事ではない。
「熊本だけじゃなく、北陸でも千葉でも豪雨の被害がありましたよね。テレビで見ていた災害が、次はいつでも自分たちのところでも起きるかも……と実感します。だから『明日は我が身』という気持ちを持って、日頃から防災グッズを揃えたり、家族で避難の話し合いをしておくことが大切だと思います。
早く動き出せれば、助かる命や防げる被害が絶対にありますから。ニュースにならなくなった後も、普段の生活を取り戻すまでには長い時間がかかります。これからもその節々で、自分たちでできる最大限のことをしないと。例えば心のケアも続けていって、見えてきたものに応えていきたいです」
立場を超えて、できることをする。日常を取り戻すために当たり前のことを伝えてくれた。
(つづく)