作詞家・森雪之丞の世界ははてしなく広い。『ドラゴンボールZ』から『キン肉マン』、『プリキュア』といったアニメの楽曲から、布袋寅泰氷室京介、さらにはキャンディーズ、シブがき隊といったアイドルの曲も手がけてきた。激動の時代を越え、48年目を迎えたレジェンド作詞家の人生の転機とは?【第3回/全5回】

森雪之丞 撮影/冨田望

「憧れだったキャンディーズとの仕事はすごく勉強にもなったし、いい経験をいっぱいさせてもらった」と細身のスーツ姿で、ソファに腰かけて語る森雪之丞さん。その姿は、まるでロックスターのようだが、自身の中では常にロックへの思いがあったようだ。

「ロックはどこへ行ったんだっていう想いは、ずっとずっと自分の中に持っていました。やっぱり本当に自分が描きたい世界は、ピート・シンフィールド(※プログレッシブバンド『キング・クリムゾン』のオリジナルメンバーで作詞を手掛けていた)が描いていたような、未来を予言しているような世界。あとデヴィッド・ボウイのような韻を踏んだしゃれっ気のある歌詞と、すごくエロティックなものが混在している作品を書きたかったんですよ。

 でも作詞家っていうのは、歌っているアーティストに言葉を託す。自分の中に書きたいことがいっぱいあっても、そのアーティストの中に共通のセンスがないとうまく伝わらないから、結局書けない……。そういうジレンマを抱えていた時に、加藤和彦さんがサディスティックミカバンドを再結成したんです。ボーカルとして桐島かれんを迎えた、そのプロジェクトに高橋幸宏さんが僕を誘ってくれて、ロックの世界に戻れたんです。そしてその後、そんな僕に興味を持ってくれていた布袋寅泰との出会いが待っていました」

 森さんが傾倒してきたロックやプログレのような歌詞を表現できるアーティスト。まさに人生の転機ともいえるのが、布袋寅泰さんとの出会いだったという。