昔の詩なのに、今も全然世の中は変わってないなって感じました
「現代詩を書き始めて、布袋くんや氷室くんに、よりロック色の強い歌詞を書くようになった。ロックの作詞家として自負が芽生え、自分を鼓舞しながら書いていた歌詞には、それまでとは変化があったと思います」
森さんの詩には普遍性がある。混乱がつづく現代を見据えたような詩を読み上げてくれた。
「『瞳を閉じて青空を見ろ』っていう僕の詩があるのだけれど、そこには“威張った政治家が金儲けのために頭を下げた木曜日”っていうフレーズがあって、昔の詩なのに、今も全然世の中は変わってないなって感じました。
結局、“人間ってしようがない生き物なんだ”っていう思いがあるんです。この30年で変わっていないし、人はいずれ亡くなってしまう……。その“あわれ”みたいな感情って、平安時代からきっと変化していない。仏教にも無常という言葉があるからね。
今振り返ってみると、この詩集に書かれている30年も、人間の愚かさとか哀れさ。そして命には限りがあるから儚く美しい。自分では無意識だったけれど、そういった部分も含めて、表現しているのかなって思っています」
作詞家としてだけではなく、詩人としても人々の胸を打つ言葉を放つ森さん。淡々とした口調からは想像できないほど、その胸の内には熱いロックの魂が秘められている。
●もり・ゆきのじょう
1954年1月14日生。東京都出身。作詞家、詩人、劇作家。大学在学中からオリジナル曲のライヴを始め、プログレッシブ・ロックバンド『四人囃子』のゲスト・シンガーとしても活躍。1976年に作詞&作曲家としてデビュー。以来、ポップスやアニメソングで数々のヒット・チューンを生みだす。90年代以降、布袋寅泰、hide、氷室京介など多くのロック・アーティストに詞を提供。リリースされた楽曲は2700曲を超える。詩人として、94年より実験的なポエトリー・リーディング・ライヴ『眠れぬ森の雪之丞』を主催。初の自選詩集『感情の配線』を2024年1月14日に発売。
作品情報
タイトル:森雪之丞自選詩集『感情の配線』
発売日:2024年1月14日
価格:2,500円(税別)
森雪之丞が1970年代より行動する詩人として、紡いできた珠玉のことば[詩]。
既発の詩集『詩画集 天使』『近未来詩集』『絶望を愛した38の症例(サンプル)』『天才的な恋』『扉のかたちをした闇』から著者自身が厳選し、さらに文芸誌『すばる』で連載時から話題となった天才・森雪之丞の生み出した図形詩が初収録。他、Act Against AIDSでの朗読の為に書下ろした詩作など、森雪之丞初のオールタイムベスト詩集。