「今回だって、“撮ってください”と言ってもらえたから、こうして撮ることができた」
──「こういったものを作ってほしい」といった、リクエストがあったわけではないんですね。
「“何でも”って。そのとき実は、ゼロから書き上げた長編用の脚本が別にあったんです。それがコロナ禍で止まってしまっていて、だからといって同じ脚本でやるのは抵抗があった。頭の中にはたくさんストックがありますが、考えたときに『演じる女』を長編にしたい! と、ピンときたんです」
──ストックというのは、短編から長編にという考えとは別に?
「それだけじゃなく、ゼロから撮りたいものもいっぱいあるんです。だけど、今回は『演じる女』がピンときた。でも映画製作って……」
──お金がないと。
「そうなんですよ! 本当にね。僕はお金に執着している人間じゃないんですけど、結局、お金がないと動けないのが本当のところ。今回だって、“撮ってください”と言ってもらえたから、こうして撮ることができたわけです」
その資金を引き寄せたのは、照屋監督自身の前作『洗骨』。そうして新たに人の心を響かせる作品誕生へとつながった。
(つづく)
がれっじせーる・ごり(てるや・としゆき)
1972年5月22日生まれ、沖縄県出身。映画監督・芸人・俳優。1995年に川田広樹とお笑いコンビ「ガレッジセール」を結成。2006年から映画監督のキャリアをスタートし、初監督作品になる短編映画『刑事ボギー』でショートショートフィルムフェスティバルの話題賞を受賞した。2009年『南の島のフリムン』で長編監督デビューを果たす。2018年、本名の照屋年之名義で監督・脚本を務め、奥田瑛二を主演に迎えた映画『洗骨』は、モスクワ国際映画祭、上海国際映画祭などの映画祭に出品。日本映画監督協会新人賞を受賞するなどの評価と、観客からも高い支持を集めた。長編監督最新作『かなさんどー』が公開。
●作品情報
映画『かなさんどー』
2025年2月21日(金)全国公開
監督・脚本:照屋年之
製作総指揮:福田淳
主題歌作詞・作曲:前川守賢
歌唱指導:古謝美佐子
出演:松田るか、堀内敬子、浅野忠信 ほか
公式サイト: https://kanasando.jp/