1997年、NHK朝の連続テレビ小説『あぐり』のヒロインとしてデビュー。フジテレビ『WITH LOVE』、大河ドラマ『利家とまつ』など着実にキャリアを積み重ねる田中さんもその道筋では戸惑いや壁も感じたという。不安の時代を乗り越えた「CHANGE」を聞いた。【第4回/全4回】

田中美里 撮影/松島豊

 最新作となる映画『美晴に傘を』で見せる柔らかくも芯の強さも感じさせる母親役からキャリアを重ねる女性、時代劇など幅広く活躍する田中美里さん。俳優としての仕事を重ねる中で、一個人として「CHANGE」といえる出来事は?と尋ねると、迷いなく「40代にありました」と返してくれた。

「それまでずっと趣味もなく、忙しくお芝居をやってきたんですけど、40代になってから、“好きだけど苦手なもの”に挑戦したいと思うようになったんです。最初に始めたのが鉛筆画。HBだけで描く絵なんですけど、そこからいろいろなつながりが広がっていって、今書道をやったり、絵を描いたりと趣味といえるものが生まれ始めました。私にとって大きな『CHANGE』ですね」

「好きだけど苦手なもの」。その筆頭にあったのが絵。この出会いが田中さんの交友関係に広がりを持たせた。

「幼少期、絵を描いても書道をやってもはみ出しちゃって先生に怒られたりしてたんです。そうなると、好きなんだけどつまらなくなってしまって……。自分で描くのは怖いけど、見に行くのは好きというのがあって展覧会とかは行ってたんですけど、やるのは避けていた。

 でも、40代になってちょっと克服したいなと思って、やり始めたのが鉛筆画だったんです。その後に書道も始めたんですけど、これは『あぐり』のときに共演した笹峯愛さん(当時・笹峰愛)の作品を見たときに、“この先生に習いたい”と思って、久しぶりに会って紹介してもらって、教わるようになったのがきっかけでした。