1983年に放送されたドラマ『青が散る』(TBS系)で俳優デビューを果たしてから40年余りのキャリアを持つ石黒賢。90年代には誰もが夢中になったトレンディドラマ『振り返れば奴がいる』(93年・フジテレビ)で情熱派の外科医・石川玄を演じ、俳優としてのスタンスを確立させた。デビューから今日に至るまで実に様々な役をこなし、数々のドラマ、映画等に出演。来年還暦を迎えるが、現役として第一線で活躍し続ける石黒さんにとってのTHE CHANGEとは──。【第3回/全4回】

ドラマ『青が散る』でデビュー以来、現在まで約40年以上俳優の仕事を続けてきた石黒さんにとって、俳優を職業としてやっていこうと決定づけた作品というと──。
「一つは大学生の頃に仲代達矢さんと御一緒させていただいた『ビジネスマンの父より30通の手紙』というドラマだと思います」
『ビジネスマンの父より30通の手紙』は1990年にNHKで放映された、ビジネスマンの父とその事業を継ぐことを期待された息子との葛藤を描いた物語だ。
「その時のプロデューサーに言われたんです。“今回はジュニアの役なので石黒さんご自身の境遇と似ている部分があるし、感情的にも理解できるじゃないですか?”って」
父親役の仲代達矢は、実力派の役者を数多く輩出する俳優養成所「無名塾」の主宰としても知られる名優だ。仲代との共演は、演技の面白さを知るきっかけとなり、本格的に俳優を仕事としていく覚悟を生んだのかもしれない。
「仲代さんはとても厳しい方で。手取り足取りというわけではありませんでしたが、ご一緒させていただいて、芝居って面白いかもしれない……と、それまで何となく思っていたことの決め手となった作品でした」