伝説的なデビュー曲『センチメンタル・ジャーニー』誕生秘話
この『六本木心中』がそうだったように、湯川さんの楽曲は“98%が曲先(曲が先にあってそれに詞を書く)”だという。ただ、唯一の例外ともいえるのが松本伊代さんのデビュー曲『センチメンタル・ジャーニー』(1981年リリース)。
「大ヒット曲の中で詞先なのは『センチメンタル・ジャーニー』が唯一くらいかも。あれは筒美京平という人のすごさを知った曲でした。この曲も飯田久彦さんから“京平先生がすごく気に入ってる声の女の子がいるんだけど、先生が悩んでいるのは、声が40代みたいで、顔はあどけなくてすごくかわいい。このギャップに京平先生が苦しんでいるので、れい子先生、スケッチを書いて欲しい”と言われて。
伊代ちゃんの写真と、伊代ちゃんが松田聖子さんの曲を歌ってるテープをもらって、それを聞きながら書いたのが『センチメンタル・ジャーニー』のスケッチ詞だったんです。それを渡したら、ちょっとしたらもうレコーディングされていて。一言一句も直さずに、京平先生がメロディをつけて仕上げてくださって(笑)。“えー、こんな見事な歌になっちゃった!”って、すごくぶったまげたんですけど、あんな完成された曲はないって思うぐらいの仕上がりでした」
作詞の世界でもイキイキと作品つくりに邁進(まいしん)する湯川さん。さらなるビッグヒットも生まれる。
ゆかわ・れいこ
1936年1月22日生。東京出身。読者としての投稿がきっかけで1960年にジャズを専門とした音楽雑誌『スイングジャーナル』で執筆を開始する。以降、音楽評論家、作詞家、ラジオDJとして幅広く活動。エルヴィス・プレスリーやマイケル・ジャクソンといったアーティストに関する原稿を数多く担当したほか、ディズニーのアニメ版『美女と野獣』『アラジン』などの日本語詞を手がけた。
湯川れい子『私に起きた奇跡』(ビジネス社)
定価:1,760円(税込)