未練がある女が男にすがるというイメージに疑問を持った

 時代を象徴する歌謡曲、J-POPはいくつかあるが、『六本木心中』は間違いなくその一つ。

「まだそのころは、日本で歌謡曲というと、着物を着て髪をアップにして、未練タラタラな女が取りすがる、みたいな世界が描かれていて。“どこにそんな髪型にして和服着ている人がいるの?”と思って。女って、とことん駄目男に尽くすけど、とことん尽くしてこれは駄目だなと思うと、もう自分から飛び出しちゃった限りは後ろを振り向かないんですよね。

 そのころ、私の作詞家の仲間が“昔遊びすぎて女房に捨てられたんだけどさ、あいつはまだ俺に惚れてるんだよなぁ”なんて言って、酔っ払うたびに電話かけて、“もしもし”って言ったとたんにガチャンと切られてたの覚えています(笑)。女はね、一度ここまでよ、と思ったら後ろを振り向かないんですよ、という思いがすごく強くて。それがこの曲のベースにはありましたね」

撮影/有坂政晴