さらに現地で感じた日本との“大きな違い”

 4か月間の撮影期間、共演者やスタッフとは、お互い片言の英語でコミュニケーションをとった。

「中国の方が“日本はどんな国か教えてくれ”って言うんですね。そこで僕の口から出たのが“すごく便利だよ。コンビニエンスストアが100メートルおきくらいにあって、自動販売機だってたくさんある”という便利自慢で……恥ずかしい、と思いました。だって、彼らに中国のことを尋ねると、革命の話しをしてくれるんですよ。誇らしい顔で。日本人のマインドにあるもの、誇れるものについてすごく考えました」

 撮影を終えて帰ってきたときに感じたのは……。

「まず、ホッとしました。そして、日本語で芝居ができるというのは、なんて素晴らしいことなんだろう、と。それに気づけたのは中国に行ったからで、やっと“苦労は買ってでもせよ”というのは本当なんだな、と思いました。それまではずっとウソだと思っていたんですよ(笑)。苦労なんて、しなくて済むならしない方がいいに決まってる、って」

 そのことを教えてくれた中国での仕事の機会に、心から感謝したという。

「40歳のときに参加した中国映画は、役者としてだけではなく、世界や国というものへの見方が変わったという意味で、大きなチェンジだったと思っています」

中井貴一(なかい・きいち)
1961年9月18日生まれ。東京都出身。1981年に映画『連合艦隊』で俳優デビューし、日本アカデミー賞・新人俳優賞を受賞。ドラマ『ふぞろいの林檎たち』シリーズ(TBS系)で人気を集め、数多くの映画、ドラマ、舞台で活躍。近年の主な出演作は、舞台『月とシネマ2023』、リーディングドラマ『終わった人』、ドラマ『ザ・トラベルナース』(テレ朝系)、『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)、映画『大河への道』(2022)、『海の沈黙』(2024)などがあり、2025年8月15日公開の映画『雪風 YUKIKAZE』が控える。
ヘアメイク:藤井俊二

パルコ・プロデュース 2025『先生の背中〜ある映画監督の幻影的回想録〜』

【作】鈴木聡 【演出】行定勲
【出演】中井貴一/芳根京子 柚希礼音 土居志央梨 藤谷理子 久保酎吉 松永玲子 山中崇史 永島敬三 坂本慶介 長友郁真 長村航希 湯川ひな/升毅 キムラ緑子 
【東京公演】6月8日(日)〜29日(日) PARCO劇場
【大阪公演】7月5日(土)〜7日(月) 森ノ宮ピロティホール
【福岡公演】7月11日(金)・12日(土) J:COM北九州芸術劇場 大ホール
【熊本公演】7月15日(火) 市民会館シアーズホーム 夢ホール
【愛知公演】7月19日(土)・20日(日) 東海芸術劇場 大ホール
公式サイト:https://stage.parco.jp/program/senseinosenaka/