直談判で劇団東京ヴォードヴィルショーに入団
――人生を決める大きな決断ですね。ご家族の反応は。
「予想もしない展開に、驚いていました。“東京に行って、お笑いの劇団に入って女優さんになる”って。“どういうことだ”と。だけど若い時って、根拠のない自信があるんですよ。“絶対になってやる!”と。行くしかないって燃えてますから。“ビッグになってやるぞ!”って、夢と希望に満ち溢れて上京しました」
――上京したときは。
「東京は、なんでこんなに人が多いんだろうと驚きました。昼間の電車も人がいっぱい乗っていて、“この人たち、なにやってんの?”って。大阪も人が多いとは言っても、昼間の環状線はガラガラですから。だけど東京は昼間も人がたくさんいる。みんな言うけど、渋谷スクランブル交差点に初めて行ったときは、祭りが始まったのかと思いました」
――住むと慣れてしまうものですね。
「そうなんですよね。あと大阪は、人の心に土足で入って来るくらいの人との関わり方、人情の厚さですが、東京は人との関わり方に冷たさを感じましたね。今になってみると、そんな人ばかりじゃないんだけど、当時は“これが都会か”と驚きました」
――そうして上京して、ちゃんと自分の目指した劇団東京ヴォードヴィルショーに。
「入団しました。直談判でした。当時の私は本当に何もできなかったんです。劇団の面接で、ほかの子が“殺陣ができます”“ジャズダンスに通ってました”とか言ってるなかで、私はただの素人。B作さんに“君は何ができる”と聞かれて、“元気です!”と答えたら“元気が一番だな”とゲラゲラ笑って入団させてくれました」
そのときから他を圧倒するくらいのマチャミの“元気”が見て取れたのだろう。
(つづく)
久本雅美(ひさもと・まさみ)
1958年7月9日生まれ、大阪府大阪市出身。劇団ヴォードヴィルショーを経て1984年に同劇団員だった柴田理恵や佐藤正宏、演出家の喰始らとWAHAHA本舗を設立。昨年、40周年を迎えた。85年のトーク・コントバラエティ番組『今夜は最高!』への出演をきっかけに舞台のみならず、バラエティ番組を中心にタレントとしても一気に人気を獲得していった。テレビではタレント、MCの印象が強いが、WAHAHA本舗以外も松竹新喜劇への定期的な出演など、演劇分野でも活躍している。最新主演舞台『花嫁 〜娘からの花束〜』では名プロデューサーの石井ふく子と初タッグ。ホームドラマに挑戦している。
●作品情報
松竹創業百三十周年『花嫁 ~娘からの花束~』
作:向田邦子
演出:石井ふく子
出演:久本雅美、羽場裕一、小林綾子、丹羽貞仁、上脇結友、瀬戸摩純、石原舞子
製作:松竹株式会社
公式サイト: https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/mitsukoshi_2506/