誰しも平等に老いるのは、クリエイターにとっても例外ではありません。自身の心身からくる老いに抗うのか受け入れるのか、そしてクリエイションへの影響……。老いと仕事(クリエイション)の関係性、ひいては男から見る老いの景色と女から見える景色はどのようなものなのでしょうか。偶然、お二人とも、自身をテーマにした作品を上梓したばかり。今回、同年代であり、お互いの作品のファンだと話す漫画家・ひうらさとるさん(58歳)と、編集者であり大学教授も務める伊藤ガビンさん(62歳)に、それぞれの近況と老いについて伺いました。【第1回/全4回】

伊藤ガビン×ひうらさとる

ひうらさとる(以下ひうら):本の中で、「日々老いて老いていきまくっている」と書かれていましたが、「毎日老いの情報が更新されていく」というのは、よく分かります。

伊藤ガビン(以下ガビン):それを忘れないうちに書こうと思ったのがきっかけです。最初は本業であるデザインやメディアに関する本を書こうという話が進んでいたんですけど、真面目に書かなくちゃならないので面倒くさくなって(笑)。それで、自分の身の回りのことで、自然に書けるのが「老い」だったんですよね。もう、老いは毎日むこうから僕に問いかけてくる。「手がカサカサになるよね」「キレる老人の気持ちが分かってきたでしょ」みたいに(笑)。だから、いくらでも原稿を書くための情報をくれるんですよ。
 ひうらさんのエッセイも、取材して何かを取りに行くというよりも、ご自分の周辺で起こっていることや実際に感じたことが中心になっているから、僕と近い部分を感じました。

ひうら:私は「Voicy」という音声メディアで配信をしているんですけど、それを聴いてくれた編集者の方が興味をもってくださって。40代後半から50代になると、子どもの手もかからなくなって、自由な時間が作れるようになる。でもブランクがあるからフットワークが重くなったり、旅に出る方法を過去からアップデートできなかったりする人もいるんですよ。「旅行代理店のカウンターに行かないとダメなんでしょ?」とか。

ガビン:チケットの取り方とか、宿泊予約の方法なんかも、かなり変わってますからね。

ひうら:だから、久しぶりに旅に出たりする人のための、同世代に向けた、いまの旅のHOW TOみたいなものがあまりないので、よかったら書いてくれませんか、というのがキッカケでした。