誰しも平等に老いるのは、クリエイターにとっても例外ではありません。自身の心身からくる老いに抗うのか受け入れるのか、そしてクリエイションへの影響……。老いと仕事(クリエイション)の関係性、ひいては男から見る老いの景色と女から見える景色はどのようなものなのでしょうか。偶然、お二人とも、自身をテーマにした作品を上梓したばかり。今回、同年代であり、お互いの作品のファンだと話す漫画家・ひうらさとるさん(58歳)と、編集者であり大学教授も務める伊藤ガビンさん(62歳)に、それぞれの近況と老いについて伺いました。【第2回/全4回】

伊藤ガビン

ーーひうらさんやガビンさんは、特に90年代から00年代にかけ、「新しいカルチャー」を創ったお二人だと思うのですが、そういった方が還暦を迎えられるようになりましたね。

ガビン:ユースカルチャーや「それまでに存在しなかった職業」を始めたひとたちがどういった老後を迎えるかという、先々のロールモデルがないんですよね。そして、そこでどう身を処すのかに興味があるなあと。

ーー確かに、書家やミュージシャンの老後の迎え方には先例がありますが、例えばラッパーやゲームデザイナーなど、世界的に見ても「新しい職業」の方は、「前例がない老い」を迎えているわけですね。

ガビン:それは結構面白いテーマだと思うんですよね。ロックとかジーンズとかユースカルチャーを代表していたものが、おじいちゃんカルチャーになっていってるのも興味深い。

ひうら:確かに。

ガビン:同じ世代であっても、背負ってるカルチャーによっては、それを話せるタイプと話せないタイプがいる。「尿もれやばくないですか?」みたいな話も、したくてもできない人はいますよね。