「うたのおにいさんになりたいと直感しました」高校2年生のある日、目にしたシーンに心を奪われた
その資料には、こんなことが書かれていたという。
「“小さな子どもは脳が柔軟で何でも吸収できる。だからこそたくさんの音楽を聴かせることで、心を豊かにすることができる。幼いころにたくさんの音楽に触れることは、その人の一生の豊かさにつながる”といったことが、書かれていたんです。
それを読み、僕はますます子どもたちに歌を届ける仕事に就(つ)きたいと思いました。そんな気持ちで帰宅したら、三兄弟の一番下の弟が、たまたま『おかあさんといっしょ』を見ていて。うたのおにいさん、おねえさんが子どもたちと一緒に歌っているシーンが目に飛び込んできたんです。その瞬間、“僕の夢はこれだ! うたのおにいさんになりたい"と直感しました」
テレビの向こう側の世界にあこがれる人は少なくない。ただ、それを実現できる人はほんの一握りだ。
「僕の家庭はごくごく一般的で、親は音楽の仕事やテレビ関連の仕事ではありませんでしたので、心では強くうたのおにいさんになりたいと願ったものの、実際にどうすればいいのか皆目見当がつきませんでした。
そこで、まずNHKのお客様センターに電話で問い合わせたんです。はじめは、けんもほろろでしたが、粘り強く尋ねると、番組の担当者さんに電話をつないでいただけたんです。うれしかったですね」
インターネットやスマートフォンがない時代、届きたいところに、アクセスするのは容易ではなかった。
「あと、友達や先輩が“音楽大学に進むといいらしいよ"とか、“うたのおにいさんの記事が新聞に載っていたよ"とか、いろいろと教えてくれたのもありがたかったです。周りの人に支えられながら、一歩ずつ歩みを進めるなかで、うたのおにいさんになるという夢をかなえられたのかなと思います」
まっすぐで揺るぎのない熱意が、周りの人たちに伝播し、夢をかなえる力に変わっていったのだろう。