「宝塚って、非日常を見せる世界なのです」「一枚ベールをかけないと、“夢の宝塚”じゃなくなる」
“癖”が染み付くのも無理はないだろう。麻実さんといえば、『ベルサイユのばら』のアンドレや『風と共に去りぬ』のレット・バトラーのような、“現実にはいない理想の男性像”を演じた時のかっこよさと美しさは他の追随を許さない。そこには宝塚の美学が宿り、男役の衣装の細部にまでこだわっていた。
「衣装のスーツの色、ジャケットの丈、タイの素材まで全部考えていました。着物の帯揚げを買ってきて、それをタイに仕立ててもらったこともありました。帯揚げって、日本独特の複雑な色があるので、徹底的にこだわりました。
なぜこだわるかというと、宝塚って、非日常を見せる世界なのです。日常はいらない、生の男性はいらない。やっぱり一枚ベールをかけないと、“夢の宝塚”じゃなくなる。でも今振り返ると、私はギリギリまで“生の男”に近づけていたと思うんです。“それ以上やると宝塚ではなくなる”、その境界線をずっと研究していました」
宝塚というと、厳格な規律が今も健在だ。麻実さんの頃はさらに厳しいイメージだが、男役は普段の生活も男としての振る舞いを必要とされたのか聞いてみると──。